先日、ある社長からこんな連絡が届きました。

「税務調査で社用車5000万円の経費を、全部ひっくり返されました」

その社長が買っていたのは、高級ドイツ車です。調査が終わった後、「ベンツは経費にならないんですか?」と聞いてきました。

答えは違います。問題は「車種」ではなかったのです。

否認された本当の理由

税務調査官が社用車の経費を認めるかどうかの判断基準は、シンプルです。「この車が本当に業務で使われていたと証明できるか」——それだけです。

その社長には、運行日誌がありませんでした。どこへ行ったか、目的が何だったか、一切記録がなかった。税務署の論理はこうです。「記録がないということは、プライベートで使っていた可能性がある。業務使用を証明できないなら、全額否認します」。

5000万円の社用車で実効税率34%なら、節税できたはずの金額は約1700万円です。記録がなかったというだけで、それが丸ごと消えました。

経費にできる社長がやっている3つのこと

一方、同じように高額な社用車を持ちながら、何年も問題なく経費処理している社長もいます。彼らが共通してやっていることは3点です。

①法人名義で購入する

個人名義の車を「会社でも使っています」と主張しても、経費として認めてもらうのはかなり難しくなります。会社のお金で、会社の名義で購入する。これが絶対条件です。

②毎回の使用を記録する

運行日誌、スマホのカレンダー、GPSアプリのログ——形式は何でも構いません。「〇月〇日、△△商事へ訪問(往復80km)」という記録が日々積み上がっていれば、それ自体が証拠になります。「毎回は面倒」と感じる気持ちはわかります。でも1700万円を守るための10秒のメモだと考えれば、安いコストです。

③取締役会議事録で業務使用を決議する

「この車両は会社業務のために使用する」という決議を議事録に残しておくことで、会社としての意思決定の証跡になります。小さな会社でも、このひと手間が税務調査で大きな安心材料になります。

「社長が乗るんだから全部業務」が一番危ない

よく聞く言い訳があります。「社長専用の車なんだから、全部業務に決まっている」というものです。

しかし税務署はそう見ません。週末の家族ドライブ、お子さんの送迎、旅行先での使用……私的使用が混在していれば、「では業務分だけ経費にしましょう」か、場合によっては全額否認という判断になります。

記録をつける意味は、「業務と私的利用を明確に分ける」ことにあります。記録があれば「これは業務分」と示せる。記録がなければ、何も言い訳ができません。

調査は突然やってくる

税務調査は、ある日突然やってきます。「調査が入ってから記録を整備しよう」では、過去分は取り返しがつきません。

今持っている社用車について、一度確認してみてください。

  • 法人名義になっているか
  • 運行日誌や使用記録があるか
  • 取締役会議事録に業務使用の記載があるか

この3点が揃っていれば、1台5000万円の高級車であっても、業務実態のある社用車として経費処理できる可能性がぐっと高まります。

まだ運行日誌をつけていないなら、今日から始めるのが一番です。過去は変えられませんが、これからの記録は積み上げられます。社用車の税務リスクについて少しでも不安があるなら、決算前に一度、顧問税理士と現状を確認しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。