先日、年商12億円の建設会社を経営する社長からこんな相談を受けました。
「顧問税理士が変わって、初めての決算で交際費3200万円を全額否認すると言われた。そんな話、聞いてなかった」と。
驚いたことに、この社長は10年以上ずっと同じ感覚で交際費を処理してきたそうです。売上が伸びるにつれて接待の規模も大きくなり、気づけば年間3000万円超。それが「ある閾値」を超えた瞬間から、全額が経費にならないルールに切り替わっていたのです。
年商10億を超えると、ルールが変わる
中小企業の社長に馴染みがあるのは「年間800万円まで損金に算入できる」という交際費の特例です。ただ、これが使えるのは資本金1億円以下の中小法人に限定されています。
資本金が1億円を超えた瞬間から、大法人として扱われ、交際費は原則として全額損金不算入になります。つまり、いくら接待に使っても、法人税の計算上は経費として認められない。3000万円の交際費があれば、そのまま3000万円が課税所得に上乗せされる計算です。
「うちは資本金3000万円だから関係ない」と思った方も、少し待ってください。完全子会社や関連会社との資本関係によっては、グループ全体で判定されるケースもあります。自社の資本構成を、一度確認しておく価値はあります。
唯一の救済策と、その厳しい条件
大法人でも、交際費として認められる例外が一つあります。1人あたり1万円以下の飲食費です。
この条件を満たせば、飲食に使った費用は交際費から除外され、会議費や福利厚生費として処理できます。10人で会食して9万円なら、1人あたり9000円。この範囲に収まっていれば、損金として計上できるのです。
ただし、この適用には領収書への5項目の記載が欠かせません。
- 飲食をした年月日
- 参加した取引先の氏名・会社名・関係
- 参加人数
- 飲食代の金額と店名・所在地
- 交際費等ではなく飲食費であることのメモ(社内確認用)
これが一つでも欠けていると、1万円以下の特例は適用されません。3000万円の交際費のうち、2800万円が1万円以下の飲食だったとしても、記録が不完全なら全額が否認対象になり得るのです。
税務調査では真っ先にチェックされる
税務署が法人の調査に入ったとき、交際費の帳簿と証拠書類は最初期に確認される項目の一つです。
特に問題になりやすいのが、領収書の宛名です。「上様」や「得意先数名」という記載は、税務調査では即アウトと考えておいてください。参加者が誰で、どんな関係の人かが分からなければ、業務上の接待であることを証明できないからです。
現場でよくあるのが、接待後にまとめて領収書を整理しようとして、細かい記録が残っていないケースです。その日のうちにメモを残す習慣がなければ、数ヶ月後には誰が参加していたか思い出せなくなっています。
今すぐできる対策
会社の交際費に不安を感じた方に、まず確認してほしいことが二つあります。
一つ目は、自社の資本金と関連会社の資本関係の確認です。中小法人の特例が使えるかどうか、ここで決まります。
二つ目は、過去1年分の交際費領収書の見直しです。宛名が「上様」になっていないか、参加者の記録が残っているか。税務調査は突然やってきます。「調査が決まってから整理しよう」では手遅れです。
交際費のルールは、売上や資本金の規模によって大きく変わります。会社が成長するタイミングこそ、処理の見直しが必要です。顧問税理士と一度、自社の交際費の扱いを確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。