先日、売上高20億円ほどの建材卸売業を営む社長から、こんな連絡が来ました。「毎年3,000万円ほど接待費を使っているんですが、税務調査でまとめて否認されたりしますか?」と。
率直に答えました。「記録の管理が甘いなら、全額否認もありえます」と。
少し驚いた様子でしたが、これは大げさな話ではありません。2026年は大型交際費を対象にした税務調査が強化される傾向にあり、同様のリスクを抱えている会社は少なくないのです。
資本金1億円を超えたら、交際費の扱いが変わる
まず前提として、法人の規模によって交際費の税務上の扱いが異なります。
資本金1億円以下の中小法人であれば、接待飲食費の全額(もしくは年800万円まで)を損金算入できます。一方、資本金1億円超の法人になると、接待飲食費の50%しか損金に算入できません。
3,000万円の接待費があれば、そのうち1,500万円は課税対象になるわけです。ここまでは制度の話で、適切に申告していれば問題はありません。問題は、「そもそもその支出が交際費として認められるか」という点です。
税務署が最初に確認する「記録の5項目」
交際費として損金算入を認めてもらうには、支出のたびに以下の5項目を記録しておく必要があります。
- 開催日時
- 参加者の氏名・会社・役職(接待相手との関係性)
- 参加人数
- 費用の金額と店名・場所
- 接待の目的(何のために誰を招待したか)
これは税法上の明確な要件です。ひとつでも欠けていると、税務署に「交際費である証明ができない」と判断される根拠になります。
税務調査では、領収書と社内の精算書を突き合わせて、この5項目が揃っているかを確認します。「店名と金額はあるけど、誰を接待したか書いていない」「接待目的の記録がない」といった不備があると、その支出は交際費として認められず、損金算入が全額否認される可能性があります。
1人1万円の壁を意識しているか
もうひとつ見落とされやすいポイントがあります。接待飲食費の損金算入には、1人あたり1万円という基準があります(2024年税制改正で5,000円から引き上げ)。
この基準を超える飲食費については、前述の5項目の記録が必須です。3,000万円の接待費を使っている会社であれば、対象件数も多くなります。1件あたりの記録が甘いと、塵も積もれば山となります。
否認されたときの追加コスト
仮に税務調査で交際費が否認された場合、本税に加えて加算税が課されます。
過少申告加算税は通常10〜15%です。ただし、意図的な隠蔽や仮装があったと判断されると**重加算税35%(場合によっては40%)**が適用されます。
3,000万円が否認されて法人税等の追加税額が発生し、さらに加算税・延滞税が積み重なると、最終的な追加コストは数百万円単位になることも珍しくありません。「記録をつけていなかっただけ」でその負担を背負うのは、明らかに割に合いません。
今すぐできる対策は「仕組み化」だけ
国税庁の調査動向として、2026年は大型接待費を伴う法人への調査が強化される傾向が指摘されています。コロナ禍で減少していた接待飲食が回復してきたタイミングで、記録管理が追いついていない会社が増えているのが背景です。
今すぐできる対策は、社内の経費精算ルールを見直すことです。交際費の精算時に5項目をすべて入力しなければ申請できないよう、経費精算システムのフォームを設計する。紙運用なら、記載チェックリストを添付させる。「仕組みとして記録が残る」体制を作るだけで、調査リスクは大きく下がります。
顧問税理士がいる会社は、次の打ち合わせで「交際費の記録管理、今のやり方で大丈夫ですか?」と一度確認してみてください。指摘を受けてから慌てるより、今のうちに動くほうがコストははるかに低いです。
年3,000万円の接待費が全額損金として認められるかどうかは、1枚の精算書の書き方にかかっています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。