先日、顧問先の社長からこんな連絡が入りました。「うちって、税務調査に来やすい会社ですか?」

年商8億円の建設業の社長で、ここ数年でようやく法人の体制が整ってきた段階でした。調査官がどの会社を選ぶかに「絶対の法則」はありませんが、狙われやすいパターンというのは確実に存在します。

今回は、私が実務で見てきた中で「これは危ない」と感じる税務調査リスクを、ランキング形式でお伝えします。

第3位:役員退職金の「功績倍率」超過

社長が退職するとき、法人から退職金を支払うことは適法です。問題は「いくら払うか」という金額の設計にあります。

税務上の計算目安として使われるのが「功績倍率法」です。最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率という計算式で、代表取締役の目安倍率はおおむね3倍とされています。月額報酬100万円・勤続20年なら、100万円 × 20年 × 3倍 = 6,000万円がひとつの基準になります。

ここで勘違いしやすいのですが、この3倍はあくまで税務上の「目安」であり、法律で定められた上限ではありません。超えたから即アウトではなく、「超えると税務署が目を光らせやすくなる」という話です。

問題になるのは、会社の業績への貢献実績も説明できないまま倍率を5倍・6倍に設定しているケースです。退職金の設計は、金額が確定する前の段階で税理士と一緒に根拠をつくっておくことが大切です。

第2位:個人的な支出を法人経費に混入

件数ベースでいえば、実務で最も多く見かける指摘事項です。家族旅行を出張費に、趣味のゴルフ代を接待交際費に、自宅の修繕費を会社の経費に——こうした処理を繰り返していると、調査でまとめて問題になります。

恐ろしいのは、単なる経費否認だけで終わらないことがある点です。意図的な隠蔽と判断されると「仮装・隠蔽」として重加算税(35%)が課されるケースもあります。通常の過少申告加算税が10〜15%であることを考えると、税負担は大幅に跳ね上がります。

「これくらいならバレないだろう」という感覚での経費計上が、後から最も大きなダメージになるパターンです。グレーゾーンは今期中に整理しておくことをおすすめします。

第1位:海外関連会社との価格操作

年商10億円を超える法人で、海外に関連会社がある場合——これが税務調査のリスクとして最も深刻な領域です。

「移転価格税制」という制度をご存じでしょうか。国内と海外の関連会社間で意図的に低い価格で取引し、日本国内の利益を圧縮していると判断されると、更正処分(追徴課税)の対象になります。実際に数億円単位の更正になったケースも珍しくありません。

また「CFC税制(外国子会社合算税制)」も、タックスヘイブンを活用した節税スキームに対して機能する制度です。「節税になると聞いてやってみた」という軽い動機での海外スキームが、後に大きな問題に発展した事例を私は何度も見てきました。

この領域は専門性が非常に高く、一般的な情報だけで判断するのは危険です。海外に子会社や関連会社をお持ちの方は、国際税務に詳しい税理士へ早めに相談することを強くおすすめします。

税務調査は「準備した人が有利」

税務調査は突然来るように感じますが、国税庁は数年分の申告データをもとに不自然な点を分析したうえで対象を選んでいます。つまり、今の経理処理が数年後のリスクを決めるということです。

「退職金の設計がまだ終わっていない」「海外取引の文書化が曖昧」「個人費用と会社費用の仕訳がグレー」——一つでも心当たりがあれば、決算前に税理士と確認する時間をつくってみてください。問題を早期に整理しておくことが、結果として最もコストの低いリスク対策になります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。