決算の2ヶ月前、ある製造業の社長から電話がありました。「今期は予想外に利益が出た。1億以上になりそうで、税金をどうにかしたい」という内容でした。

こういう相談は、毎年この時期に増えます。設備投資で節税するには時期が遅すぎる。生命保険も以前ほど効かなくなった。そんな状況で「1億円を丸ごと損金にできる方法がある」と聞けば、誰でも耳を傾けますよね。

その仕組みが、オペレーティングリース(通称:OL)です。

航空機や船舶を「一口出資」で持つ仕組み

オペレーティングリースとは、航空機・船舶・コンテナなどの大型資産を複数の法人が共同出資して取得し、それをリース会社に貸し出すというスキームです。

なぜ節税になるかというと、リース資産は会計上「減価償却」が必要で、特に初年度は大きな損失が計上されやすい構造になっています。

1億円出資した場合、損金算入率はおよそ70%。つまり7,000万円が損金として計上でき、実効税率を34%とすると、約2,380万円の節税効果が生まれます。利益が大きい年の「消費期限付きの節税手段」として、中小企業オーナーの間で活用されているのはこのためです。

税理士が自分から積極的に勧めにくい理由のひとつは、スキームが複雑で説明に時間がかかること。そして後述する「出口戦略」を理解しないまま使うと、かえって痛い目を見るからでもあります。

本質は「節税」ではなく「繰り延べ」

ここが一番大切なポイントです。

オペレーティングリースは、税金をゼロにする魔法ではありません。あくまで「課税のタイミングをずらす仕組み」です。

初年度に大きな損金が出る一方、リース期間の後半になると逆に収益(益金)が発生します。損失が先行し、利益が後からついてくる構造なので、スキームの終盤には「出口」を考えておく必要があります。

具体的には、リース満了時に利益が小さい年に合わせて調整する、退職金や設備投資などの損金を出口のタイミングで重ねて吸収する、といった対応が取られることが多いです。

つまり、1億円の節税スキームを「仕込む」段階で、5〜10年後の出口まで見据えて設計しておく必要があるわけです。これを考えずに飛びつくと、満期時に想定外の税負担が発生します。

向いている会社・向いていない会社

どんな会社にも使えるわけではありません。一般的に向いているのは、継続的に利益が出ており、数年先も安定的に事業が続く見込みのある法人です。そして、出資に回せる余剰資金があること。最低出資額は商品によって異なりますが、5,000万〜1億円規模の案件が多いとされています。

逆に、来期以降の業績が不安定な場合や、資金繰りがタイトな会社には向きません。出口までリース期間(通常5〜10年程度)は資金が拘束されるため、急に現金化できない点もリスクです。

「税理士が教えない」本当の理由

冒頭で「税理士が教えない」と書きましたが、正確には「自発的に提案しづらい」が正しい表現です。

スキームの設計と出口戦略まで含めると、相当な時間と専門知識が必要で、通常の顧問報酬の範囲では対応しにくいのが現実です。また、損金算入が将来の益金の先取りであることを丁寧に説明しないと、後でトラブルになるリスクもあります。

だからこそ、この仕組みを検討したいなら、自分から税理士に切り出すことが大切です。「オペレーティングリースを使いたいが、出口まで含めてアドバイスほしい」と伝えれば、専門家も具体的に動いてくれます。

今期の利益が見えてきたら、早めに動く

オペレーティングリースは、決算日までに出資契約が完了していることが要件になります。思い立ってすぐ翌日に使える仕組みではなく、案件によっては2〜3ヶ月の準備期間が必要なこともあります。

今期の利益が大きくなりそうだと感じたら、早めに税理士に相談しておきましょう。大きな節税は、思いついたときではなく、準備したときに実現するものです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。