先日、年商10億円規模の製造業を営む社長から、こんな電話がかかってきました。「先生、決算まであと3週間なんですけど、今からでも何か手はありますか?」
この時期になると、毎年似たような相談が増えます。利益が想定より出てしまった。もう少し経費を積めないか。そういった焦りを抱えながら決算を迎える経営者の方は、決して少なくありません。
実は、多くの税理士があまり積極的に提案しない手法があります。それが「オペレーティングリース」を使った、決算前の大型経費化です。
航空機の「持分」を持つだけで1億円が経費になる
オペレーティングリースとは、航空機・船舶・コンテナなどの大型資産を複数の事業者が共同で取得し、リース会社を通じて航空会社などに貸し出す仕組みです。
ここで経営者の方に注目してほしいのは、取得した持分の価格を、契約した期に全額損金算入できるという点です。1億円の持分を取得すれば、その期の経費として丸ごと1億円を落とせます。
実効税率34%で計算すると、約3,400万円の税負担を翌期以降へ繰り延べられることになります。合法的な手続きの中で、これだけまとまった金額を動かせる手法はそう多くありません。
3月決算なら「今月末」が絶対の期限
この手法には、絶対に外せない条件がひとつあります。契約の締結が決算期末以前であることです。
3月決算の会社であれば、3月31日までに契約書にサインが必要です。4月1日に締結しても、その恩恵は来期まで一切受けられません。これが「ラストチャンス」と言われる理由です。
物件の選定、審査、契約書の準備には相応の時間がかかります。「来週でも間に合いますか?」という問い合わせをよく受けますが、正直なところ、かなりギリギリです。動くなら今すぐというのが実情です。
大切なのは「節税完了」ではなく「税の繰り延べ」だと理解すること
ここを誤解したまま契約してしまう経営者の方が多いので、はっきりお伝えします。
オペレーティングリースは、節税ではなく課税を将来へ先送りする仕組みです。リース期間が終わると、持分の売却益として益金が戻ってきます。「今期1億円を経費化した」の裏には、「将来どこかで1億円規模の益金が発生する」という事実が必ずあります。
だからこそ、出口戦略とセットで考えることが欠かせません。よく組み合わされるのは、オーナー経営者の退職金支払いのタイミングに合わせる方法、M&Aによる会社売却と組み合わせる方法、あるいは次のリース契約へ乗り換えて繰り延べを継続する方法などです。
出口設計なしに「税金を減らせるから」と飛びつくのは危険です。将来の益金が発生したとき、会社の状況や税率がどうなっているかまで見据えた判断が必要になります。
なぜ「知らない社長」がこれほど多いのか
税務署がこの手法を広めないのは当然として、担当税理士からも提案を受けないケースが多いようです。理由のひとつは、物件選定や契約スキームに専門知識が必要なため、慣れていない事務所だと扱いを避けることがあります。
もうひとつは金額の問題です。1口あたり数千万〜数億円規模のスキームが多く、年商3億円以下の会社では現実的に動きづらいケースがほとんどです。ある程度の利益体質と手元資金がそろってはじめて選択肢に入る手法です。
決算まで余裕がある方は、今のうちに動く
6月・9月・12月決算の会社であれば、まだ時間があります。むしろ今こそ、落ち着いて税理士と話せるタイミングです。「今期の着地はどれくらいになりそうか」「動かせる手元資金はあるか」を整理した上で、早めに選択肢を検討しておくことをおすすめします。
決算3週間前に焦るより、半年前に動いた方が、間違いなくいい判断ができます。まずは顧問税理士に「オペレーティングリースを検討したい」と一言伝えてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。