先日、製造業を営む社長からこんな連絡が来ました。

「税理士の先生に『もう打ち手はないですね』と言われたんですが、本当に何もないんでしょうか?」

決算まであと1ヶ月。そう聞いて、私は思わず「いや、まだ3つあります」と返してしまいました。

年末に「節税しておけばよかった」と後悔する社長を、この時期になると本当によく見かけます。でも、3月決算ならいまこの瞬間が、最後のチャンスです。順番に見ていきましょう。


30万円未満の設備は「今期中に買う」が鉄則

パソコン、複合機、業務用の家具、スマートフォン。こうした30万円未満の備品類は、中小企業であれば購入した年度に全額を経費にできます。これを「少額減価償却資産の特例」と呼びます。

通常であれば、設備は耐用年数に応じて数年かけて減価償却するものです。でも中小企業にはこの特例があり、年間300万円を上限に、即時で費用計上できるんですね。

来期に先送りしたらどうなるか。同じ設備を買っても、それは「来期の経費」にしかなりません。今期の利益が多く出ているなら、今買うことで確実に今期の節税になります。「どうせ必要になるもの」なら、決算前に購入を完了させることを強くおすすめします。


「決算賞与」は書面1枚で成立する

利益が想定以上に出たとき、多くの社長が頭をよぎるのが「従業員に還元しつつ節税できないか」というアイデアです。そこで使えるのが、決算賞与です。

ただし、単に「3月末に払えばいい」という話ではありません。**ポイントは「書面による事前通知」**です。決算期末までに、全員へ個別の支給予定額を書面で通知する必要があります。実際の支払いは翌月末まででOKですが、通知が期末を過ぎると今期の損金には算入できなくなります。

実効税率が34%のケースで計算すると、100万円の賞与を支給すれば、約34万円の節税効果があります。従業員へのモチベーション還元と節税を同時に達成できる、社長にとって一石二鳥の施策です。

「今から間に合うの?」と思われるかもしれませんが、書面の通知さえ期末までに完了していれば間に合います。まだの方は今週中に動いてください。


「前払い」するだけで今期の経費になる固定費がある

最後に、見落とされがちながら効果が大きい施策をご紹介します。短期前払費用の活用です。

事務所の家賃、火災保険料、サービスの年間使用料など、毎月支払っている固定費を12ヶ月分まとめて前払いすると、その全額を今期の経費として計上できます。

年間で300万円の固定費があるとして、3月末に向こう12ヶ月分を一括払いしたとします。すると今期に300万円が経費計上され、34%の実効税率なら約100万円の節税になる計算です。

ただし条件があります。「継続的なサービスの提供を受けるもの」で、翌年度末までに全額サービスが完了するものに限ります。また、毎年同じ処理を継続することが原則です。単年だけやって翌期はやらない、というのは認められません。


残り1ヶ月でやることリスト

整理すると、今すぐ確認すべきことは次の3点です。

  • 30万円未満の設備・備品で「来期でいいか」と後回しにしているものはないか
  • 決算賞与を支給するなら、期末までに書面通知の準備ができるか
  • 家賃や保険料などの固定費を一括前払いに切り替えられるか

どれも「知っているかどうか」だけで数十万〜数百万円の差がつく話です。今期の利益水準と手元キャッシュを確認しながら、担当の税理士と早めに打ち合わせを設定してみてください。

決算1ヶ月前にこの記事を読んでいるあなたは、まだ間に合います。焦る必要はありませんが、来週に先送りするのはもったいない。今日の夜にでも、税理士へ一本メッセージを入れてみてはいかがでしょうか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。