先日、年商12億の不動産会社の社長とお話しする機会がありました。「今期、利益が出すぎて困っている。何かいい手はないか」——開口一番、そう切り出されました。

決算まで3ヶ月を切った時点で、法人税の見込み額が2億円を超えそうだというのです。手元の資金は十分ある。でも、そのまま税務署に持っていかれるくらいなら、何か有効な使い道があるはずだ——そういう相談でした。

そこで話に出たのが、オペレーティングリース(通称「オペリース」)です。

航空機を「みんなで持つ」ことで何が起きるのか

オペリースとは、大型航空機や船舶を複数の法人が共同出資して保有し、それを航空会社などにリースする仕組みです。

この仕組みの核心は、減価償却の速さにあります。航空機は取得直後から帳簿価値が急速に減少するため、出資した初年度に、出資額とほぼ同額の「損失」を法人の帳簿に計上できます。

たとえば6億円を出資すると、初年度に約6億円の損失が発生します。年商10億を超える安定黒字の法人であれば、この損失を当期利益と相殺することで、法人税を最大2億円規模で圧縮できる計算になります。決算直前に「使える損」を生み出せる——これがオペリースの最大の特徴です。

「節税」ではなく「繰り延べ」——ここが最重要

ただし、ここで一つ、絶対に押さえておくべきことがあります。

オペリースは「節税」ではありません。正確に言うと「課税の繰り延べ」です。

リース期間が終了する7〜10年後、航空機が売却されるタイミングで、今度は売却益が法人に入ってきます。今期に繰り延べた税金は、そこで「まとめて」課税されます。税務署が忘れているわけではない、ということです。

では、それでも活用する価値があるのはなぜか。

答えはシンプルです。「今払うはずだった2億円を7〜10年間手元に残せる」——これがもたらすキャッシュフロー上の優位性と、投資収益の組み合わせにあります。IRR(内部収益率)が5%を超えるような優良な航空機案件であれば、リース収益そのものも見込めるため、単なる繰り延べ以上の効果が生まれます。

プロの設計は「出口」で決まる

オペリースを使うなら、7〜10年後の「出口」をどう設計するかが、成否を分けるポイントになります。

売却益が出るタイミングに合わせて、役員退職金の支払いや大型設備投資を重ねることで、その課税を吸収させる——これが税の専門家が描くフルスペックの設計図です。退職金は損金算入できますし、設備投資も即時償却や特別控除を活用できます。チェスでいえば、数手先を読んで盤面を組む感覚です。

逆に、出口の設計を後回しにしたまま「とりあえず出資」してしまうと、7〜10年後に予期しない課税が集中し、かえって苦しくなるケースも起きます。

スキームを誤ると追徴リスクも

オペリース自体は合法的な仕組みですが、組み方を誤ると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。

出資金の調達方法や出口タイミングの設定が不自然だと、租税回避行為と判断される可能性があります。金額が大きいだけに、追徴課税の規模も相応です。「合法かどうか」の判断は案件の細部に宿ります。設計段階から信頼できる税理士を入れることが、このスキームを使う際の大前提です。

こんな法人に向いている

実際にオペリースが機能しやすいのは、以下のような条件を満たす法人です。

  • 年商10億円超で、安定的に高い利益が出ている
  • 出資に充てられる手元資金が数億円単位でまとまっている
  • 7〜10年先の出口戦略(退職、事業承継、大型投資)がある程度見えている

利益の振れ幅が大きい業種や、資金繰りが不安定な法人には向きません。「黒字に悩む」フェーズの法人のための道具、と考えてください。

今期の決算で多額の法人税が見込まれており、かつ手元資金に余力がある——そういう社長であれば、一度専門家に相談してみる価値は十分あります。ただし、決算の3〜6ヶ月前から動き始めないと間に合わないケースも多いため、「そろそろかな」と思ったら早めに動くことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。