先日、顧問先の社長からこんな連絡が入りました。「税務調査で法人保険の経費が全額否認されそうです」と。
年間200万円の保険料を5年間払い続けてきた計算になるので、追徴と加算税・延滞税を含めると軽く1,000万円を超える話になります。「節税になると聞いて入ったのに、こんなことになるとは」と、電話口で声が震えていました。
法人保険は「節税の王道」とも言われますが、税務調査では意外なほどよく否認されます。今回は実際に否認されたケースをランキング形式でお伝えします。今まさに加入中の保険がある方は、ぜひ照らし合わせてみてください。
3位:受取人を「遺族」にしたまま経費処理
法人が保険料を負担する生命保険で、死亡保険金の受取人を「被保険者の遺族」にしているケースがあります。「役員の死亡に備えた保険だから、遺族が受け取るのは当然」と思いがちですが、これが大きな落とし穴です。
法人が保険料を負担するなら、受取人は法人でなければ経費として認められません。遺族が受取人になっている場合、保険料は「役員への経済的利益の供与」として役員給与に認定されます。
つまり、経費否認と役員給与課税が同時に発生する「二重課税」の状態になります。毎年100万円の保険料を払っていれば、数年分さかのぼって数百万円規模の追徴になります。加算税と延滞税が乗れば、最終的な請求額はさらに膨らみます。
契約書の受取人欄を一度確認してみてください。「妻・子ども」などと書かれていたら、至急税理士に相談することをおすすめします。
2位:解約返戻金を収益に計上し忘れる
法人保険の節税スキームは「保険料を損金算入して経費化し、解約返戻金で資金を回収する」という流れが基本です。ところが、解約した年の処理を忘れているケースが意外に多い。
解約返戻金は、受け取った年に全額を雑収入として益金計上しなければなりません。「去年解約したけど、戻ってきたお金の経理処理は?」と確認すると、「えっ、必要なんですか?」という反応が返ってくることがあります。
たとえば5年間で1,000万円の保険料を払い、800万円の返戻金が戻ってきた場合。差引200万円の節税効果があったとしても、800万円を益金計上しないままにしていると、税務調査で800万円分の課税所得が増えます。法人税率33%なら264万円の追徴、そこに加算税と延滞税が乗ってきます。
「解約した時点でもう完了」と思いがちですが、税務処理は解約した年度にしっかり完結させる必要があります。数年前に解約した保険がある方は、今すぐ申告書を確認してみてください。
1位:2019年の通達改正を無視した「全損処理」
これが最も深刻で、追徴額も最大です。
2019年6月、国税庁は高解約返戻金型保険の損金算入ルールを大幅に改正しました。解約返戻率が85%を超えるタイプの保険は、保険料の最大40%しか損金算入できなくなりました。それ以前に広まっていた「全額損金」の感覚のまま申告を続けているケースが、今でも税務調査で発覚しています。
年間保険料1,000万円の法人が全損処理を続けた場合、損金算入できる400万円との差額600万円が毎年否認されます。3年続ければ1,800万円の所得が修正され、加算税・延滞税を含めた追徴課税の平均が2,000万円を超えるというのも、決して大げさな数字ではありません。
さらに厄介なのは、「古い契約だから改正の影響を受けない」という誤解が広まっていることです。契約時期よりも「現在の申告方法が正しいか」が問われます。保険会社や代理店から勧められた処理をそのまま続けているなら、一度税理士に確認することが重要です。
法人保険は使い方を誤ると、節税どころか多額の追徴課税に発展します。特に1位の全損処理問題は、「保険会社に言われたとおりにやっていた」という事例が多く、悪意がなくても否認されます。
今加入中の保険があれば、「受取人は法人になっているか」「過去に解約した保険の益金計上は漏れていないか」「損金算入割合は通達改正後のルールに沿っているか」の3点だけ確認してみてください。不安な点があれば、保険会社ではなく、顧問税理士に相談するのが安全です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。