先日、ある社長からこんな相談を受けました。

「決算が2ヶ月後に迫っているんですが、今期の利益が想定より1億円ほど多く出そうで。何かいい手はありませんか?」

年商10億円超の製造業を営む社長で、設備投資はすでに終わっている。不動産も検討したけどタイミングが合わない。そんな状況で浮上してくる選択肢のひとつが、今回ご紹介するオペレーティングリース、特にJOLCO(ジョルコ)です。

JOLCOって何?航空機を持つ必要があるの?

JOLCO(Japanese Operating Lease with Call Option)とは、航空機や船舶などを購入し、それを航空会社や海運会社にリースする事業に、組合形式で出資する仕組みです。

「航空機を買う」と聞くと途方もない話に聞こえますが、社長が直接やることはシンプルです。「1億円を組合に出資する」だけ。運用は専門の運営会社が担いますし、社長が航空機の整備に関わることはありません。

1億円が8,000万円の経費になるカラクリ

このスキームの面白さは、減価償却の速度にあります。

航空機や船舶は大型資産ですが、オペレーティングリースの仕組みでは、初年度に出資額の70〜80%を損失として計上できます。1億円出資なら、最大で8,000万円が初年度の損失として認識されます。

実効税率を約34%と仮定すると、約2,700万円の税負担を翌期以降に繰り延べられる計算です。

今期に予想外の大きな利益が出た会社が1億円を出資すると、課税対象の利益が8,000万円圧縮されます。これにより、キャッシュアウトを今期から5〜10年後に先送りできるわけです。

「節税」ではなく「課税の繰延」という正しい理解

ここは本当に大事なポイントなので、強調させてください。

JOLCOは「節税スキーム」と紹介されることがありますが、正確には違います。「課税の繰延」です。

リース期間が終了すると、組合から分配益が発生します。この段階で、初年度に計上した損失分が収益として認識され、課税が発生します。つまり、払わなかった税金が消えるわけではなく、将来に移動するだけです。

「それじゃ意味がないのでは?」と思う方もいますよね。でも、お金の時間的価値を考えると話が変わります。今期の2,700万円を手元に残して5〜7年運用できれば、その分だけキャッシュを活用できます。さらに、リース終了時の出口で利益を相殺する手段を用意しておけば、実質的な税負担を大幅に圧縮することも可能です。

出口設計が命綱

JOLCOで失敗するパターンのほとんどは、入口の節税効果だけに注目して、出口設計を後回しにしてしまうケースです。

リース終了時(5〜10年後)には益が発生します。このとき何も手を打っていなければ、当初繰り延べた税金をそのまま払うことになります。それどころか、その年の他の利益と重なれば、予想以上の税負担になることもあります。

よく使われる出口戦略としては、次のようなものがあります。

  • M&Aによるのれん償却: 会社を買収し、のれん代を損失計上して相殺する
  • 設備投資の前倒し: 大型設備の購入で減価償却費を積み上げる
  • 別のオペレーティングリースへの再投資: 繰り延べを続けながら事業拡大を図る

どの手段も、5〜10年後の事業計画との整合性が前提です。「今期の税金を減らしたい」という動機だけで入ると、出口で困ることになります。

どんな会社に向いているか

JOLCOが特に有効なのは、こういった状況の会社です。今期に大きな一時利益(不動産売却・会社売却など)が発生した。数年後にM&Aや大型設備投資が確実に見込まれる。最低出資額(1,000万〜1億円程度)を動かせる安定したキャッシュがある。

逆に、資金繰りが不安定な会社や、出口の見通しが立たない会社には不向きです。JOLCOは流動性の低い投資ですので、「急にお金が必要になった」という事態には対応できません。

組合の募集は早い者勝ち

JOLCOの組合は年に数回しか組成されず、募集が始まると早期に満口になることも珍しくありません。「決算月に間に合わせたい」と思っても、直前では参加できないケースもあります。

「今期、思ったより利益が出そうだ」と気づいた段階で、早めに税理士や専門のファイナンシャルアドバイザーに相談するのが得策です。出口設計まで含めて、自社の状況に本当に合うかどうかを判断してもらうのが最初のステップです。焦って入るのが一番危険です。早めに動いて、じっくり検討するのがJOLCOとの正しい付き合い方です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。