先日、製造業を営む社長からこんな連絡が入りました。「今期の利益が3億円を超えそうなんですが、税金が怖くて……」と。

決算が近づくたびに、この種の相談が増えます。利益が出ることは喜ばしいことです。でも何もしなければ、その約34%——つまり1億円以上が法人税として消えていきます。それを知ったとき、多くの社長が初めて「もっと早く動いておけばよかった」と口にするんです。

税金を払う前にできることがある

いきなり結論を言います。利益3億円に対して、合法的にその大半を「経費」として計上し、課税を大きく圧縮する方法があります。それが「オペレーティングリース」という節税スキームです。

名前は聞いたことがあっても、仕組みをきちんと理解している社長はまだ少数派です。ここでは、決算前に知っておくべき要点を整理していきます。

仕組みはシンプル。航空機や船舶を「一緒にリースする」だけ

オペレーティングリースとは、航空機や船舶といった大型資産を複数の事業会社が共同出資し、それをリース事業者に貸し出す取引です。

この仕組みの最大の特徴は、出資した金額のうち最大90%程度を、数年間にわたって損金(経費)として計上できる点にあります。

たとえば3億円を出資した場合、最大2億7000万円が損金として認められます。もともとの利益3億円がほぼ丸ごと圧縮されるわけです。実効税率34%で計算すると、1億円前後の税負担軽減を見込める計算になります。

「節税」ではなく「繰り延べ」という本質

ただし、正確に言うと「経費で消える」のではありません。「益金の計上を将来に先送りする」という性質の取引です。この違いは大切です。

リース期間(多くは5〜10年)が終わると、繰り延べていた利益が一括で戻ってきます。そのタイミングに税金が発生します。

では意味がないのか——そうは思いません。今期1億円を税金として支払えば、その資金は手元から完全に消えます。一方で繰り延べることができれば、今期の手元キャッシュを厚く保てます。その資金を設備投資・人材採用・借入返済に活かすことができる。これが「節税」以上の価値を生む理由です。

知らないと踏み抜くリスクが2つある

オペレーティングリースは魅力的な仕組みですが、扱いを誤ると痛い目を見ます。

1. 出口のタイミングに合わせた資金計画が必須

リース終了後に益金が戻ってくることは最初からわかっています。そのとき、手元資金が薄い状態だと一気に資金繰りが苦しくなります。「節税できた!」と喜んでいたら、5年後に予想外の納税で困った——という話は実際にあります。

2. スキームの選定ミスで否認されるリスク

近年、税務当局はオペレーティングリースへの審査を厳格化しています。実体のない取引や、租税回避目的とみなされる構造は否認の対象になりえます。否認されると、節税どころか追徴課税を受ける可能性もあります。信頼できる専門家を経由した、適切に組成されたスキームを選ぶことが絶対条件です。

こういう会社に向いている

すべての会社に適しているわけではありません。効果が出やすいのは、おおむね次のような条件が重なるケースです。

  • 当期の利益が1億円以上出ている
  • リース終了後の益金発生に耐えられるキャッシュフローがある
  • 将来的にM&Aや減価償却など、他の損金を見込める計画がある

逆に、来期以降の業績が読みにくい局面や、短期で資金回収が必要な状況には向きません。出口設計込みで判断することが大前提です。

動けるかどうかは「タイミング」で決まる

オペレーティングリースで損金計上できるのは、出資が完了した事業年度からです。決算日を過ぎてしまえば、今期分の節税には間に合いません。

年商10億・利益3億という規模の会社が、「知らなかった」というだけで1億円以上を失うのは、本当にもったいない話です。

思い当たる方は、まず顧問税理士に「今期、オペレーティングリースは間に合うか」と聞いてみてください。スキームの質を見極めるのは専門家の仕事ですが、動き出すかどうかを決めるのはあなた自身です。今期の利益が見えてきた段階で、早めに動くのが正解です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。