「3億円を出資するだけで、9,000万円も節税できる」——そんな提案を、顧問税理士や証券会社から受けたことはありませんか?
先日、年商8億円規模の製造業の社長からこんな相談を受けました。「決算3ヶ月前に航空機のオペレーティングリースを紹介された。数字を聞くとすごく魅力的なんだが、何か落とし穴はないか」と。
結論から言うと、落とし穴はあります。しかも2種類。今日はその中身をできるだけ平易に整理してみます。
仕組みそのものはシンプル
航空機オペレーティングリースとは、航空機を保有する匿名組合(SPC)に出資することで、そこから分配される「損失」を自社の損金として計上できる仕組みです。
3億円を出資した場合、損失分配の割合にもよりますが、出資額の多くを損金算入できるケースがあります。実効税率30%で計算すれば、9,000万円前後の節税効果。確かに数字だけ見ると圧倒的な魅力があります。
ただし、ここで立ち止まって考えてほしいのです。この9,000万円は本当に「消えた税金」なのか、と。
節税ではなく、課税の先送りである
これが最大の落とし穴です。組合は航空機を航空会社にリースし、7〜10年後に売却します。そのとき、残存価値の売却益が一括で益金算入される仕組みになっています。
今3億円を出資して9,000万円の節税メリットを受けても、7〜10年後に同額前後の課税が戻ってくる可能性が高い。「節税」という言葉を使っていますが、正確には「課税のタイミングを先に延ばしている」だけです。
課税の先送りそのものが悪いわけではありません。問題は、出口の準備がないまま飛び込んでしまうことです。
出口設計があって初めて意味をなす
7〜10年後の出口時点で、大型設備投資や役員退職金の支給などで利益を圧縮できる計画があれば、先送りした課税を相殺できます。本当の意味での節税効果が生きてくるわけです。
逆にそういった準備がなければ、先送りした税金をドカンとまとめて払う羽目になります。しかも最悪のタイミングで——たとえば業績が悪い年に出口が来た場合、資金繰りを直撃することも十分あり得ます。
「決算前の緊急節税対策」として即断するのが、一番危険なパターンです。
コロナが暴いた、もうひとつのリスク
課税先送りの問題に加えて、元本割れリスクも見逃せません。
2020年、コロナ禍で世界中の航空会社が経営危機に陥りました。フライトが止まり、リース料を払えない会社が続出。航空機の資産価値が急落し、組合からの分配どころか数千万円単位の損失を抱えた社長が実際に出ています。
3億円を出資して節税メリットが9,000万円のはずが、最終的に元本を大きく割り込んだ案件も少なくありません。節税効果を大幅に上回る損害が現実に起きた、ということです。こうしたリスクは提案書の表紙にはなかなか書いてありません。
検討するなら、この3点を必ず確認する
航空機オペレーティングリースを検討する場合、最低限以下の3点を顧問税理士と一緒に整理してください。
- 出口のタイミングに何で課税を相殺するか(退職金・設備投資・赤字年度など、具体的な計画があるか)
- SPCの信用力と、航空会社の財務健全性(最悪シナリオで元本がどこまで棄損しうるか)
- 7〜10年後の自社キャッシュフローへの影響(出口益金算入が来た年の資金繰りを試算しているか)
この3点が揃っていない状態で「とにかく今期の決算に間に合わせたい」と動くのは、かなりリスクが高いと言わざるを得ません。
節税商品は、仕組みを正確に理解したうえで、自社の中長期計画に組み込んで初めて効果を発揮します。「3億円で9,000万円の節税」という言葉の裏に何があるのか、今一度立ち止まって顧問税理士に確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。