先日、年商10億円規模の卸売業の社長から、こんな相談を受けました。「今期の利益が1億円を超えそうで、決算まであと4ヶ月なのに税理士からまだ何も提案がなくて……」。こういう場面で必ず候補に挙がるのが、「オペレーティングリース」です。
聞いたことはあるけれど詳しくは知らない、という社長が多いのも事実。今回はその仕組みと実務上のポイントを、できるだけ平易に解説します。
結論:1億円超を経費にできるスキームです
オペレーティングリースとは、航空機や船舶を特別目的会社(SPC)経由でリースする投資スキームです。1口3,000万円程度から出資でき、リース期間中の減価償却費を法人の損金として計上できます。
規模によっては今期の課税所得を1億円単位で圧縮できます。実効税率34%で計算すると、3,400万円超の税負担を将来に繰り延べられる計算です。正確には「節税」ではなく「課税の繰延」ですが、今のキャッシュを手元に残せるという資金繰り効果は絶大です。
仕組みはシンプルです
まず、航空機や船舶をリースするSPCに出資します。このSPCは、航空会社・海運会社からリース料を受け取り、投資家に分配します。
ここで重要なのが減価償却のタイミングです。航空機や船舶は非常に高額な資産ですが、リース期間(通常5〜7年)にわたって前倒しで急速に減価償却されます。この減価償却費が法人の損金として計上されるため、今期の課税所得を大幅に圧縮できるのです。
たとえば3,000万円出資して、初年度に1億円近くの損金が立つケースもあります。出資額の3倍以上のレバレッジがかかる、これがオペレーティングリース最大の特徴です。
出口設計がスキームの命運を分けます
ただし、必ず「出口」の問題がついてきます。
リース期間が終わると、SPCが航空機などを売却します。その売却益が法人の「益金」として課税されます。つまり、今期に繰り延べた税金が、リース終了後にまとめて返ってくるわけです。
だから重要なのは、リース終了のタイミングに合わせて「損金を作る手段」を別途準備しておくことです。定石として使われる組み合わせは主に3つです。
- 役員退職金の支払い:全額損金算入できるため、益金との相殺に最も使いやすい
- 大型設備投資:機械装置の即時償却と組み合わせ、翌期以降も損金を分散
- M&A(のれんの償却):買収のれんを5年償却することで、継続的に損金を生む
5〜7年後の会社の状況を今から見越して、どの出口を選ぶか設計しておく必要があります。このプランニングこそが、スキームの成否を分ける最大のポイントです。
どんな会社に向いているか
どの会社にも向くわけではありません。大まかな目安として考えてください。
向くケース:今期の利益が突出して大きい、5〜7年後に役員退職金や設備投資の予定がある、手元キャッシュに余裕がある。
向かないケース:資金繰りが逼迫している、数年後に損金を作る見通しが立たない、そもそもの利益が安定していない。
「余剰資金を運用しながら、節税もしたい」という状況にある会社に最も向いています。節税効果だけを追いかけて出口設計なしに入ってしまうと、リース終了後に一気に税負担が膨らむリスクがあります。
動くなら早めに、が鉄則です
オペレーティングリースは、申込みから組成まで数ヶ月かかります。決算の3〜6ヶ月前には動き出さないと今期には間に合いません。
さらに、年度末が近づくと人気案件は満口になりやすく、条件の良いものから埋まっていきます。「来期でいいか」と先送りにしている間に選択肢が狭まるのが、このスキームの実態です。
今期の利益が見えてきた段階で、まず顧問税理士に「うちの状況で使えるか」を確認してみてください。答えが「使える」なら、そこからのスピードが全てです。
オペレーティングリースは、出口まで設計し切れれば資金繰りを保ちながら大きな課税を繰り延べられる、強力な選択肢です。まだ一度も検討したことがないなら、今期の決算が固まる前に動いておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。