先日、創業18年の不動産会社の社長から、こんな相談を受けました。
「オペリースで5億円節税したんだけど、来年が満期で……税理士に『出口で全額課税されますよ』って言われて。え、節税じゃなかったの?」
青ざめた表情でそう話してくれました。実は同じような状況に置かれている社長、思ったより多いんです。
「5億円の経費計上」は本当に節税なのか
オペレーティングリース(以下、オペリース)は、航空機や船舶などへの出資を通じて、その減価償却費を経費として計上できる仕組みです。
出資年度に5億円を費用に落とせれば、課税所得が5億円圧縮できる。確かに数字だけ見れば、インパクトのある節税策に見えます。
ただ、これを「節税」と呼ぶのは、正確ではありません。
正体は「課税の繰り延べ」
オペリースの本質は、課税を先送りする仕組みです。
出資時に5億円を経費として計上した分、その資産の帳簿上の価値はゼロになります。そしてリース期間が終わり、航空機や船舶が売却されると、その売却収入がそのまま益金(利益)として計上されます。
今期に消した5億円は、5〜10年後の出口で丸ごと戻ってくる。出口課税率は実質100%です。節税効果はゼロ。正確に言えば、課税のタイミングを将来にずらしているだけなんです。
具体的に、いくらの税負担が来るか
数字で見てみましょう。
5億円を出資したオペリースが8年後に満期を迎え、5億円の益金が計上されたとします。その年度に他の事業利益が重なれば、課税所得が一気に膨らみます。法人実効税率をおよそ34%として計算すると——
5億円 × 34% = 約1.7億円の税負担
これが1年度に集中して発生します。出資時に手元資金を動かしていた場合、資金繰りへのインパクトも相当なものになります。
「説明を受けていない」では手遅れ
「節税商品」として紹介されるオペリースですが、導入時に出口課税まで丁寧に説明されないケースは、現場では珍しくありません。
5年後・10年後の自社の利益水準を今から見通すのは難しい。他の利益と重なれば実効税率が上がり、単独でも相当の税負担になります。
特に危険なのは、「今期の利益を何とか圧縮したい」という短期的な動機だけで導入してしまうパターンです。出口の設計なしに飛びつくと、課税を先送りどころか、一点集中で課税されるリスクを自ら抱え込むことになります。
出口対策として検討すべきこと
すでにオペリースに出資しているなら、今から出口設計を考えることが重要です。
一般的に検討される対策としては、複数リースの満期を年度分散させること、退職金や大型設備投資のタイミングを出口年度に合わせて損金を積み上げること、あるいは別の繰り延べ商品と組み合わせて出口の益金を吸収する構造をつくること、といった選択肢があります。
ただし、どれが有効かは自社の財務状況・キャッシュフロー・今後の利益見通しによって大きく変わります。「何かを足せばいい」という単純な話ではないので、必ず専門家と一緒に設計してください。
今期中に確認しておきたいこと
もし今、オペリースに出資しているなら、以下を確認することから始めてみてください。
- 満期はいつか?出口年度の事業利益はどの程度になりそうか?
- 出口対策はすでに設計されているか?
- 顧問税理士と出口シミュレーションを共有しているか?
節税商品は「入口の金額」より「出口の設計」で評価する。これが、長く事業を続けてきた経営者の共通認識だと感じます。
オペリースの満期を前に青ざめないよう、今期のうちに一度シミュレーションをしておくことを強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。