先日、「3億円を出資して2億円以上を損金にできる節税があると聞いたんですが、本当ですか?」と、年商10億円ほどの不動産会社の社長から連絡がありました。

「ありますよ」と答えたあと、続けてこう聞きました。「ところで、2026年のリスクはご存知ですか?」

社長は少し、黙りました。

3億円出資で、初年度に2億円超を損金にする仕組み

航空機オペレーティングリースとは、航空機を購入して航空会社に貸し出す事業に、匿名組合の形で出資するスキームです。

出資額は案件によりますが、3〜5億円が目安。初年度から大きな減価償却費が発生するため、損金として計上できる金額が出資額を上回ることもあります。実効税率34%の前提で試算すると、7,000万円前後の税負担が減る計算になります。

億を超える法人税が見込まれる年に、まとまったキャッシュを持つ企業オーナーがよく検討するスキームです。証券会社や税理士事務所からの提案が増え、ここ10年ほどで広く普及してきました。

でも本当に「節税」なのか?

ここを正直に言わない提案者が多いので、はっきり書きます。

航空機リースの節税効果は、あくまで「課税の繰延」です。消えるわけではありません。

7〜12年後、リース期間が終わると航空機が売却されます。その際の売却益が、組合員である出資者に按分されて益金に算入されます。今期に「節税」した税金は消えたわけではなく、将来に後ろ倒しになっているだけです。

「それなら意味がないじゃないか」と思うかもしれませんが、そうとも言い切れません。現在価値で考えれば、今払わなくていい税金には資金運用の機会があります。また、将来の出口タイミングで退職金や損失と相殺できれば、結果的に節税につながるケースもあります。大事なのは、「節税できた」と思い込んで出口を放置しないことです。

2026年が「出口課税」の集中年になる理由

問題は、ここです。

2015年前後に組成された案件が、ちょうど7〜12年の満期を迎えるのが2022〜2027年にかけて。特に2025〜2026年は案件の出口が重なりやすいタイミングです。

当時、節税目的で出資した多くの企業が、今まさに出口課税の請求書を受け取りつつあります。「そういえばあの出資、まだ続いているな」と思い当たる社長がいたら、今すぐ担当税理士に確認することをお勧めします。

売却益が一括で益金算入されると、その年だけ大きな課税所得が発生します。退職金の準備や損金を使えるタイミングと重なればいいのですが、何も対策していないと思わぬ税負担になります。出口課税は「後から考えれば良い」問題ではなく、出資前から出口戦略を設計しておくべきものです。

国税庁が目をつけている、もう一つのリスク

課税の繰延だけなら計画次第で対応できますが、もう一つ見逃せないリスクがあります。損金否認です。

スキームとしての経済的実態が乏しいと判断された場合、国税庁に損金算入を否認されることがあります。節税目的が前面に出た案件や、実際の航空機稼働実態が薄い案件などは、特に注目されやすい傾向があります。

否認された場合、本税に加えて過少申告加算税(10〜15%)が上乗せされます。悪質と判断されれば重加算税35%です。節税のつもりが、追徴課税で終わる最悪のケースです。「大手証券が持ってきた案件だから安心」は、もはや通用しないと思ったほうがいいでしょう。

まだ出資中の方、これから検討する方へ

すでに出資している方は、出口のタイミングと益金の見通しを今期中に整理してください。退職金や設備投資など、損金を作れる手段と組み合わせることで、出口課税の影響を和らげることができます。

これから検討する方は、提案書の「節税効果○○万円」という数字だけ見ないでください。出口時の益金算入額、想定売却年、その年の自社の税務状況——この三つをセットで確認してから判断するのが鉄則です。

航空機リースは使い方を誤らなければ有効なスキームです。ただ「大きな節税ができる」という一点だけで飛びつくのは危険です。2026年という年回りを意識しながら、担当税理士とじっくり話し合ってみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。