先日、年商10億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。「顧問税理士に節税の話をすると、いつも小規模企業共済と生命保険の話しか出てこない。もっと大きな手はないんですか?」
正直に言うと、これはよくある話です。税理士によっては、説明責任が重くなるリスクのある提案を自ら避ける傾向があります。あえて言えば「教えてくれない」のではなく「積極的には紹介しない」のです。
でも知っているか知らないかだけで、数千万円単位の差がつくのが節税の世界。今回は、年商10億前後の社長が真剣に検討すべき、大型の経費化スキームを3つ紹介します。
3位:中古不動産の減価償却スキーム
結論から言います。築22年超の木造物件を法人名義で購入すると、耐用年数がわずか4年になります。これが3位のスキームの核心です。
木造建物の法定耐用年数は22年ですが、それを超えた中古物件は「法定耐用年数×20%」で残存耐用年数を計算します。22年×20%=4.4年、切り捨てで4年。つまり建物部分の価格を、4年間で全額経費に落とせるのです。
1億円で取得した物件の建物部分が1億円相当なら、年2,500万円の減価償却費が計上できます。法人実効税率34%をかければ、年間850万円の節税効果になる計算です。
ひとつ大事な注意点があります。物件を売却するとき、減価償却した分だけ取得費が下がるため、売却益に課税されます。これは「節税」ではなく「課税の繰り延べ」です。この点を理解した上で活用するかどうかが、判断の分かれ目になります。
2位:オペレーティングリース(航空機・コンテナ投資)
2位は、富裕層や中小企業オーナーの間で近年急速に普及している、オペレーティングリースです。
航空機やコンテナ、船舶などの大型設備を組合(匿名組合)でまとめて購入し、航空会社や運送会社にリースする仕組みです。投資家である社長は、組合の損益をそのまま法人の損益として取り込めます。
金額感を具体的に言うと、1億円を投資した場合、初年度に投資額の60〜70%——つまり6,000〜7,000万円を損失として計上できるケースがあります。法人税率換算で、節税額が2,000万円を超えることも珍しくありません。
リース期間中は設備の減価償却費と利息が先行して損失になり、後半は黒字に転じる構造です。その黒字を退職金や他の損失で吸収するタイミングを合わせて設計するのが定石です。
「単年の節税額」だけで判断するのは危険で、キャッシュフロー全体でどう設計するかが肝。顧問税理士がこのスキームに不慣れな場合は、専門家へのセカンドオピニオンをおすすめします。
1位:M&Aの「のれん代」5年均等償却
1位は、破壊力という点でダントツの手法——M&Aによるのれん代の5年均等償却です。
M&Aで他社を純資産より高い金額で買収すると「のれん」が発生します。会計上の償却期間は最長20年ですが、税務上は繰延資産として5年での均等償却が認められています。この差がスキームの核心です。
5億円のM&Aで3億円ののれんが発生した場合、年6,000万円の損金が5年間にわたって計上できます。累計3億円が経費として落ち、法人税率34%で換算すると節税総額は約1億円になる計算です。
「M&Aは大企業の話では?」と感じる社長もいるかもしれませんが、近年は数千万円〜数億円規模の中小M&Aが急増しています。後継者不足の中小企業を事業承継の受け皿として買収しながら、節税も同時に実現するケースが増えているのです。
ただし、M&A仲介費用・デューデリジェンス費用・統合コストなど初期支出は相応にかかります。また買収先の財務状態が節税効果を大きく左右するため、必ず税理士・弁護士・M&A専門家のチームと連携して進めることが前提です。
「知っているだけ」で億の差がつく
3つのスキームに共通しているのは、「資産の取得や投資の意思決定と節税を一体で考える」という視点です。節税だけを目的にした判断は本末転倒ですが、どうせ動かす資金があるなら税引後キャッシュを最大化する選択肢は知っておくべきです。
もし顧問税理士との会話が毎回「生命保険」「小規模企業共済」で止まっているなら、一度、大型節税に精通した専門家へのセカンドオピニオンを検討してみてください。知っているかどうかだけで、億単位の差がつく話です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。