先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「オペレーティングリースって、2024年の改正で終わったって聞きましたよ。もう使えないんですよね?」
その方は年商10億の製造業を営む社長で、決算3ヶ月前になって慌てて節税の選択肢を探していました。結論から言えば——答えは「いいえ」です。正しく組成されたオペレーティングリースは、改正後の今も十分に機能します。
「改正で終わった」は大きな誤解
2024年の税制改正によって、オペレーティングリースへの規制は確かに強化されました。市場に出回っていた粗悪な商品が淘汰されたのは事実です。ただ、「規制強化=全面禁止」ではありません。改正の趣旨を正しく理解したスキームは、今も合法的に機能しています。
「改正があった=もう使えない」という誤情報が広まり、本来活用できる社長が機会を逃しているケースが後を絶ちません。これが、今日この話を書こうと思った理由です。
仕組みをざっくりおさらい
オペレーティングリースは、航空機や船舶などの大型資産を専門のリース会社が購入し、あなたの法人が匿名組合員として出資する形を取ります。リース会社が資産を保有・管理し、航空会社や海運会社に貸し出す。その過程で発生する減価償却費などの損失が、出資割合に応じてあなたの法人に分配されます。
この分配された損失を法人の損金に算入することで、課税所得を圧縮できる——というのが基本的な仕組みです。
2億円出資で6,800万円の効果
具体的な数字で見てみましょう。
2億円規模の出資であれば、3〜5年にわたって継続的に損失を計上できます。法人の実効税率を34%と仮定した場合、最大で約6,800万円の課税繰延効果が生まれます。
「6,800万円の節税」と書きたいところですが、ここで重要な補足があります。
正確には「節税」ではなく「課税の繰延べ」
オペレーティングリースは、厳密に言えば節税ではなく課税繰延です。
スキームの出口——リース期間終了後に資産を売却するタイミング——では、売却益が発生します。これまで損失として計上してきた分が、この出口で益に転換されるイメージです。つまり、いまの課税を将来に繰り延べているにすぎません。
「それなら意味がないじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。繰延期間中に手元の資金を運用できる、出口タイミングを事業計画に合わせることで益が出る年に備えた対策を打てる、事業縮小や引退のタイミングと合わせて税負担を分散できる——こういった活用が可能になります。
今日の6,800万円と5年後の6,800万円は価値が違うというのが本質です。
改正後に注意すべき3つのポイント
①組成内容の精査が必須
2024年改正では、実態のない取引や形式だけを整えた商品が規制対象になりました。しっかりとした実態がある航空機・船舶のリース取引であれば今も問題なく機能します。対象資産・リース先・組成会社の実績を必ず確認しましょう。
②出口戦略を先に設計する
「損失が出るから買う」という発想だけでは失敗します。3〜5年後の出口で益が出たとき、法人の利益・役員報酬・他の損金をどう対策するか、先に設計しておくことが不可欠です。
③実績ある税理士と組む
オペレーティングリースを適切に扱えるのは、専門知識と経験を持つ税理士に限られます。「節税できますよ」と気軽に紹介してくる業者には要注意。組成内容を精査し、出口まで伴走してくれるパートナーを選ぶことが何より大切です。
決算前に「何か節税できないか」と焦る気持ちはよくわかります。ただ、オペレーティングリースは出口まで含めた長期設計が命です。2024年の改正で市場が整理されたいまこそ、質の高いスキームを見極めるチャンスでもあります。「改正で終わった」という声に惑わされず、一度信頼できる税理士に相談してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。