先日、年商3億円の建設会社を経営するAさんからこんな相談が来ました。「うちの税理士は毎年『役員報酬は月額固定で設定してください』としか言わない。本当にそれだけでいいのか?」
正直に言うと、その税理士が間違っているわけではないのですが、「最適解」でもありません。月額固定報酬だけで設定している社長は、年間で数百万円単位の税負担を余分に払っていることがあるんです。
「賞与は損金算入できない」は半分正解
法人が役員に支払う賞与は、原則として損金に算入できません。ここまではよく知られた話です。
ところが、事前確定届出給与という制度を使えば、この常識が崩れます。
仕組みはシンプルです。株主総会で「◯月◯日に◯円の賞与を支払う」と決議し、税務署に届出書を提出する。それだけで、通常は損金にならない賞与が、全額損金として認められるんです。
たとえば、月額報酬80万円×12ヶ月に加えて、6月と12月にそれぞれ500万円の賞与を事前届出で組み込む。年間の役員報酬総額は1,960万円。うまく設計すれば、個人の所得税・住民税と法人税のバランスを取りながら、全体の税負担を大きく下げられます。
持株会社スキームと組み合わせると「桁」が変わる
さらに一歩進んで、持株会社(ホールディングス)スキームと組み合わせると、効果は一気に跳ね上がります。
持株会社を設立して事業会社の株式を保有する形にすると、グループ内での報酬の流れを最適化できます。持株会社が受け取る配当は受取配当等の益金不算入制度が使えるため、法人段階でほぼ課税されずに資金を動かせます。
この設計を整えると、実効税率にして最大34%ポイントの差が生まれるケースがあります。年収ベースで試算すると、この差が年間1,500万円超の節税効果につながることも珍しくありません。
それなのに、実際にこの仕組みを活用できている中小企業オーナーは5%未満と言われています。残りの95%は「知らないまま」損をし続けているわけです。
絶対に注意してほしい落とし穴
この制度を使う上で、最も怖いのが届出との乖離です。
事前確定届出給与は、届出通りの金額・日付に支払わないと全額損金否認になります。「思ったより業績が悪かったから今期は減額しよう」というのが通用しない。届出書に書いた金額を一円でも違えれば、その賞与全体が損金から外れます。
税務調査で指摘を受けてから慌てても手遅れです。届出書の提出期限は株主総会から1ヶ月以内か、事業年度開始から4ヶ月以内の早い方ですから、年度が始まってからでは間に合わないこともある。設計の段階から法人税に精通した税理士と一緒に進めることが大前提です。
次の期が始まる前に動いてください
月額固定報酬だけで満足している社長は、今期の決算が終わったタイミングで一度、報酬設計を見直してみることをおすすめします。
「うちの規模じゃ関係ない」と思っているかもしれませんが、年商1億円でも、設計次第で数百万円の差が出ることは普通にあります。事前確定届出給与の届出期限を逃すと、次の機会は1年後です。動くなら、次の期が始まる前のいまがベストタイミングです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。