先日、年商8億の建設会社を経営するKさんから、こんな相談を受けました。

「役員報酬を上げると所得税が跳ね上がるし、法人に残すと法人税がかかる。どこに行っても同じことを言われる。何か突破口はないんですか?」

そこで私がお伝えしたのが、「持株会社スキーム」です。正直、多くの税理士が積極的に提案しないこの仕組み、知っているかどうかで手取りが数百万円単位で変わることがあります。

持株会社スキームの仕組み

持株会社とは、今の運営会社の「上」に親会社を設立する構造のことです。イメージとしては、今の会社(A社)の株式を、新たに設立した会社(B社=持株会社)が保有する形です。

このとき、A社からB社に「経営指導料」を支払う契約を結びます。A社がB社に払う経営指導料は、適切に設定すれば全額損金に算入できます。つまりA社の税負担が減り、そのお金がB社に流れる仕組みです。

なぜ報酬が「3倍」になるのか

従来の1社体制では、社長が受け取れる役員報酬はその1社からしか出せませんでした。役員報酬を増やせば個人の所得税率が上がり、どこかで頭打ちになる。多くの社長がこの壁にぶつかっています。

2層構造にすると、A社からも、B社(持株会社)からも報酬を受け取れます。2社合計の報酬設計が可能になるため、それぞれの金額を調整しながら、所得税率を意識的にコントロールできるようになります。

具体的には、A社からの報酬を年間2,000万円、B社からの報酬を年間1,500万円といった設計ができます。1社から3,500万円を取るより、2社に分散したほうが実効税率を大幅に下げられるケースがあるのです。条件が揃えば、実効税率を20%以下に抑えることも現実的な話です。

年商10億クラスで本領を発揮する

このスキームが特に効果を発揮するのは、年商5億〜10億クラスの企業です。

この規模になると、社長が手取りを維持しながら法人内に資金を蓄積したいというニーズが強くなります。持株会社スキームを使うと、個人の手取りは変えずに、B社(持株会社)に資金を積み上げていくことができます。B社に蓄積した資金は、不動産投資や事業拡大の原資として活用できます。

Kさんのケースでは、試算したところ年間で約800万円の節税効果が見込めました。「税理士に相談してもいつも同じ答えしか返ってこなかった」とおっしゃっていたKさんが、初めて前向きな顔をされたのを今でも覚えています。

見落とせない税務上の要件

ただし、このスキームには設計の巧拙が大きく影響します。

経営指導料の金額設定は、「実態に見合った適正な金額」でなければなりません。根拠のない金額を設定すると、税務調査で否認されるリスクがあります。業務の内容、時間、類似取引の相場を踏まえた合理的な積算が不可欠です。

また、持株会社の設立には登記費用や維持コスト(決算申告費用など)もかかります。節税効果がそのコストを上回るかどうか、事前にしっかりシミュレーションしておく必要があります。

さらに、株式移転の際の税務処理、グループ通算制度の適用可否など、専門的な判断が求められる場面が多くあります。この仕組みは「知っているかどうか」よりも、「正しく設計できるかどうか」が勝負です。

今の顧問税理士に聞いてみてください

持株会社スキームは、決して「特殊な節税」ではありません。年商5億を超えた段階で、検討する価値がある標準的な選択肢のひとつです。

まだ顧問税理士からこの話が出ていないなら、一度「持株会社の導入について相談したい」と切り出してみてください。その反応を見るだけで、顧問先に対してどこまで踏み込んでくれる税理士かがわかります。

法人税・所得税の両方を俯瞰できる税理士と組めば、報酬設計の選択肢は思っている以上に広がっています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。