先日、年商12億円の建設業を営む社長とお話ししていたとき、こんな一言が出てきました。
「税理士からいくつか節税の提案を受けているんだけど、正直どれが一番お得なのかよくわからなくて」
利益が億を超えてくると、節税の選択肢も一段変わります。中小企業向けの定番策は一通り使い切って、次のステージへ——という局面です。今回は、そのフェーズにいる社長が知っておくべき節税スキームを、効果の観点から3位→1位の順に整理してみます。
第3位:法人保険——かつての王者、今は存在感が薄れた
法人保険は長年、社長の節税の代名詞でした。ところが2019年に国税庁が規制を強化してから、状況は大きく変わりました。
それまで広く使われていた「全損処理」——保険料の全額を損金に算入する手法——が封じられ、損金に算入できる割合が大幅に縮小されたのです。
今では1億円を保険料として支払っても、実際に節税できる額は1,700万円前後にとどまるケースが多いです。投資額に対する節税効果としては、物足りない数字です。「昔は保険が鉄板と聞いていたのに」とおっしゃる社長もいますが、今の制度下ではメインの節税手段としては機能しにくくなっています。
第2位:不動産SPC——理論上は強力、でもハードルが高い
不動産SPCは、特別目的会社(SPC)を通じた不動産投資スキームです。建物の減価償却費を損金として計上することで、大きな節税効果を狙えます。
理論上は非常にパワフルなのですが、参加するには最低でも3億円超の投資が必要になることがほとんどです。資金規模の面で、参加できる社長は自然と絞られます。
さらに出口戦略の複雑さも難点です。投資した不動産をいつ・どのように売却・清算するかによって税負担が大きく変わるため、入口だけでなく出口まで設計しきれる専門家と組む必要があります。「とりあえず節税したい」という感覚で手を出せる性質のスキームではありません。
第1位:オペレーティングリース——損金算入率ほぼ100%の破壊力
現時点で最も注目を集めている節税スキームが、オペレーティングリースです。
航空機や船舶などの大型資産をリース契約で活用する仕組みで、1口あたり1億円程度から参加できます。最大の特徴は損金算入率がほぼ100%に達することです。
3口・3億円を投資した場合、損金は3億円近くになります。実効税率30%で計算すると、節税額は約9,000万円。さらに積み上げれば、損金9億円・節税3億円という数字も現実的な射程に入ってきます。利益が大きい期に複数口をまとめて組むことで、税負担を一気に圧縮できるのが最大の強みです。
2つの注意点は絶対に見落とさないで
オペレーティングリースは強力ですが、事前に理解しておくべき点が2つあります。
ひとつは、長期拘束です。 契約期間は7〜10年が一般的で、途中解約は原則できません。その間に大きな資金需要が発生しても対応が難しくなるため、資金繰りに十分な余裕がある会社でないと、参加リスクが高まります。
もうひとつは、満期時の益金算入です。 リース期間が終わると、それまで損金として計上してきた分が「益金」として戻ってきます。節税を「先送り」している面があるということです。満期のタイミングで利益が落ち着いている、あるいは別の手段で相殺できる——そういう出口まで含めた設計が前提になります。
「節税できた」で終わりにせず、10年後の着地まで描けているかどうかが、このスキームを本当に活かせるかどうかの分岐点です。
動くなら早めに。案件は先着順
オペレーティングリースの案件は、募集定員に達した時点で終わりです。人気の案件は数週間で埋まることもあります。期末が近づいてから動こうとしても、すでに選択肢が限られている——というケースは珍しくありません。
利益の見通しが立ってきた段階で、早めに顧問税理士や専門家へ相談を始めるのが得策です。億単位の利益が出るようになったなら、節税の戦略もそれに見合ったステージへ引き上げる時期に来ています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。