先日、年商3億円の建設会社の社長から、こんな相談を受けました。
「毎年500万円の法人保険に入っているんだけど、顧問の先生に『もう節税にならない』って言われた。何か代わりになるものはないの?」
実は、このような相談が2019年以降、急増しています。それほどインパクトが大きかったのが、国税庁による法人保険の通達改正です。
2019年、法人保険の節税が実質「終わった」
それまでの法人保険は、高い解約返戻率(積み立てたお金が戻る比率)を活かして、保険料を損金に算入しながら、解約時に退職金として使う、という設計が広く使われていました。
ところが2019年7月、国税庁が通達を改正。解約返戻率が85%を超える保険については、保険料のほぼ全額を資産計上するよう求めることになったのです。
つまり、年間500万円を払っても、経費として認められるのは数十万円程度。「節税になっている」と思って入り続けてきた保険が、実質的に何の効果もない商品に変わってしまったわけです。
担当の保険営業マンが「2019年以降は設計が変わっています」と説明してくれていれば問題ないのですが、既契約のまま更新を続けているケースが、今でも少なくありません。まずは自社の契約を確認してみることをお勧めします。
では、今何が使えるのか
法人保険が使えなくなったとはいえ、別の手段はあります。ポイントは「損金計上できる仕組みを、保険以外で作る」こと。代表的な3つを紹介します。
① オペレーティングリース(OL)
航空機や船舶などの大型資産を共同購入し、減価償却の恩恵をシェアする仕組みです。初年度に出資額の60〜70%が損金として計上できることが多く、利益が出た年に一気に節税したいというニーズにマッチします。
たとえば1,000万円を出資した場合、初年度に600〜700万円が損金に落ちる計算です。法人保険が損金ゼロになった今、まとまった利益を抱える会社にとっては代表的な選択肢のひとつになっています。
ただし、出口では益金が発生するため、退職金や他の損金計上手段との組み合わせが前提です。「入口の節税だけ考えて飛びついた」という社長が、数年後に慌てるケースをよく目にします。
② 返戻率50%以下の定期保険
改悪されたのは「高返戻率」の保険です。逆に言えば、解約返戻率が50%以下の定期保険であれば、保険料の全額を損金として計上できます。
節税目的というよりも、万が一の際の死亡保障を確保しながら、全額損金で経費を作りたいという社長向けの設計です。受取人を法人にしておけば、社長が亡くなったときの退職金原資にもなります。
解約しても戻ってくるお金は少ないため「掛け捨て」に近い感覚ですが、純粋に損金を作りたいなら現実的な選択肢です。
③ 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
独立行政法人が運営する共済制度で、取引先の倒産に備えることを本来の目的としています。月5万円から積み立てでき、掛け金は全額損金。最大800万円まで積み立てることができます。
「共済なのに節税になるの?」と驚く社長も多いのですが、掛け金を経費として落としながら、いざというときに低利融資を受けられる制度です。小さく始めやすいため、他の手段と組み合わせる形でよく使われます。
ただし、加入から40か月未満で解約すると元本割れするため、「しばらく解約しない」ことが前提です。この点だけは注意が必要です。
3つを選ぶ基準は「出口」から逆算する
3つとも損金を作れるという点は共通ですが、性質はまったく異なります。大まかな使い分けとしては次のように考えるとわかりやすいです。
- 大きな利益を1〜2年でまとめて飛ばしたい → オペレーティングリース
- 保障と損金を同時に確保したい → 低返戻率の定期保険
- 毎月コツコツ積み立てながら経費にしたい → 経営セーフティ共済
重要なのは、「どこで利益を受け取るか」「退職金の設計はどうするか」を先に決めることです。入口の損金ばかりに目が行くと、出口で想定外の税負担を受けることになりかねません。
まだ法人保険の見直しをしていない場合は、2019年以前に設計した契約がそのままになっていないかを、まず確認してみてください。心当たりがあれば、今期中に担当の税理士と一度話しておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。