先日、年商3億円ほどの建設業の社長と話していて、こんな場面がありました。

「今期は利益がかなり増えたんですよ。でも忙しくて、役員報酬はそのままにしてます」

思わず「それは今すぐ見直してください」と言いたくなりました。

役員報酬の設定は、一度決めたら変えないものだと思っている社長が意外と多いのですが、実はここに大きな節税の穴があります。やり方を少し変えるだけで、年間数百万〜2,000万円以上の差が出ることも珍しくありません。

今回は、特に見直しが急がれる「3つのNG」をお伝えします。

利益が増えたのに、報酬を据え置いている

事業が好調で、前期より利益が30%以上増えた。そんな嬉しい状況の裏側で、役員報酬を据え置いたままにしている社長は要注意です。

法人税の実効税率はおよそ34%。利益が増えれば増えるほど、この税率で課税されます。一方、役員報酬は法人の損金(経費)になります。適切に報酬を引き上げれば、法人で34%課税されるはずだったお金を、より低い所得税率で個人に移せるケースがあるんです。

「でも所得税も高いのでは?」という声もよく聞きますが、報酬額のコントロール次第では、法人税率より低い税率に抑えることは十分に可能です。利益が増えた年こそ、役員報酬を見直す「旬」だと覚えておいてください。

業績が上がっても何も動かないでいると、余分な法人税を毎年払い続けることになります。もったいない話です。

期末になって、慌てて変更しようとしている

「決算が来月なんですが、今から役員報酬を上げてもいいですか?」

こういった相談が、毎年決算直前の時期に増えます。残念ながら、この質問への答えはほぼ「できません」です。

役員報酬の変更が損金として認められるのは、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行ったものだけです。これは税法上のルール(定期同額給与)で決まっており、それ以外のタイミングで報酬を変更すると、増額した分が損金不算入になってしまいます。

決算の2ヶ月前に慌てて報酬を引き上げても、節税効果はゼロ。それどころか、給与として支払った分だけ資金が出ていくという最悪の結果になります。

「知らなかった」では済まないのが税務の世界です。役員報酬の見直しは、新年度が始まってすぐの最初の3ヶ月が勝負。この時期を逃すと、1年間その設定を変えることができません。

社会保険と所得税のバランスを、3年以上見直していない

3つのNGのなかで、最も影響が大きいのがこれです。

役員報酬の最適化というと「高くすれば節税」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。報酬が上がると所得税・住民税が増えると同時に、健康保険・厚生年金といった社会保険料も増えます。

社会保険料には、標準報酬月額の上限があります。つまり、一定以上の報酬に設定すれば、そこから先は社会保険料がほぼ頭打ちになる構造があるんです。この「社会保険の構造」を踏まえたうえで、法人税・所得税・社会保険料の三者バランスを最適化するのが、本当の意味での役員報酬設計です。

法改正や税率変更によって、3年前に最適だった設定が今は最適でなくなっているケースは非常に多く、見直しをしていない社長では年間2,000万円以上の差が出ることもあります。「自分の報酬、最後にいつ見直したかな」と思ったなら、それが動くべきサインです。

先送りするほど、損が積み重なる

役員報酬は一度決めると1年間変更できません。だからこそ、毎年「期首3ヶ月以内」に必ず検討する習慣を持つことが大切です。

特に今期の業績が好調な社長は、次の事業年度が始まった直後が最大のチャンスです。ここで手を打てるかどうかで、数年後の手残りに大きな差が生まれます。

「うちは大丈夫だろう」と思っている社長ほど、一度顧問税理士と数字を並べて確認してみることをおすすめします。もし現在の顧問が役員報酬の最適化提案をしてくれていないなら、それ自体を問い直すタイミングかもしれません。年に一度の見直しを習慣にするだけで、手元に残るお金は確実に変わってきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。