先月、相談に来た年商3億円の建設会社の社長が、開口一番こう言いました。
「税務調査が入って、過去5年分の役員報酬がほぼ全部『認定賞与』にされそうなんですが……」
顔色が青ざめていて、手に持っていた資料が少し震えていたのを今でも覚えています。
認定賞与になると何が起きるのか
「認定賞与」という言葉、聞いたことはあっても詳しく知らない社長は意外と多いです。
簡単に言うと、法人が損金として計上した役員報酬のうち、税法の要件を満たさなかった部分を「実は給与じゃなくて賞与だった」と税務署が認定することです。
認定賞与になると、法人側は損金不算入(計上していた経費が消える)、個人側には所得税・社会保険料が追加で課税されるという二重のダメージを食らいます。
しかも調査は最大5年遡及されます。役員報酬が月300万円の会社なら、5年で1億8,000万円。そのうちの一部でも認定賞与になれば、追徴額は軽く1,000万円を超えます。では、どんなケースで認定賞与にされるのか。実際の調査でよく指摘されるNG行為を5つ紹介します。
5位:期中に役員報酬を変更してしまう
役員報酬には「定期同額給与」という要件があります。毎月同じ金額を支払い続けることが条件で、これを外れると変更前後のどちらかが損金として認められなくなります。
変更できるのは期首から3ヶ月以内の定時株主総会のタイミングだけです。「業績が上がったから途中で増やした」「資金が厳しくなって下げた」——どちらも、要件から外れた瞬間に変更分が全額否認されます。
社長自身が気軽に金額をいじっていると、思わぬ落とし穴にはまります。
4位:株主総会議事録が整っていない
役員報酬の決定には株主総会(または取締役会)の決議が必要です。ところが、オーナー社長の会社では「どうせ自分しか株主がいないから」と、議事録を作っていないケースが珍しくありません。
調査官は必ずといっていいほど議事録の提出を求めます。存在しなければ「決議がなかった=要件を満たさない」とみなされ、全額否認されるリスクがあります。
形式的な書類と侮らず、毎期きちんと作成・保管しておきましょう。
3位:家族役員への「なんとなく高額」な報酬
奥様や子どもを役員にして報酬を払うこと自体は問題ありません。ただし、その金額が「実際の業務量・責任に見合っているか」という観点は、調査官が最初に確認するポイントです。
「妻に月80万円払っているが、実際の業務は帳簿入力だけ」——これは典型的な否認パターンです。業務内容を文書化し、外部相場と比較できる状態にしておくことが重要です。根拠があれば守れますが、根拠がなければ指摘に反論できません。
2位:事前確定届出給与の届出を忘れる
役員にボーナスを支払いたい場合、事前に税務署へ「事前確定届出給与」の届出が必要です。これを忘れてボーナスを払うと、支払った全額が損金不算入になります。
届出の期限は株主総会から1ヶ月以内、または期首から4ヶ月以内の早い方です。毎年の作業ですが、意外と失念しているケースが多い。さらに、届出額と実際の支払額が1円でも違えば、その期の全額が否認されます。「少し増やしてあげようと思って」という優しさが、思わぬコストになります。
1位(最凶):生活費・家賃・旅行を法人で落とす
これが最も重大です。社長の自宅家賃、生活費のカード明細、家族旅行の費用——こうしたものを法人の経費として計上しているケースは、調査の「最優先ターゲット」です。
法人側は損金不算入で税負担が増え、個人側は「法人から受け取った経済的利益=役員報酬」として所得税が課されます。このダブルパンチに5年分の延滞税・加算税が加わると、追徴総額が億単位になることも珍しくありません。
「社長の生活コストは全部会社持ち」という感覚でいると、取り返しのつかないことになります。
今すぐ確認してほしいこと
認定賞与のリスクは、多くの場合「知らなかった」「なんとなくやっていた」ことから生まれます。まず今期の役員報酬設定の根拠を確認し、議事録が揃っているか見直してみてください。
家族役員がいる場合は、業務内容と金額の妥当性を記録として残しておくことを強くおすすめします。税務調査は突然やってきます。「指摘されてから考える」では遅いのが、役員報酬の怖いところです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。