先日、顧問先の社長(年商約15億、製造業)から「うちの会社って、税務調査が来やすい部類ですかね」とポツリと聞かれました。
決算の打ち合わせの席でのことです。話しているうちに、じわじわと顔色が変わっていくのがわかりました。「実はグループ会社との取引価格を今期から変えていて……」
ああ、これは来るかもしれないな。そう直感しました。
年商10億を超えた会社には、税務調査の「選定基準」に引っかかりやすい特徴がいくつかあります。今日はよく相談を受ける「狙われやすい5つの理由」をお伝えします。
調査率は一般法人の「3倍以上」という現実
国税庁の統計では、法人全体の税務調査率はおおよそ3%台です。ただし年商10億を超える中堅企業以上になると、実態としてその3倍以上に跳ね上がると言われています。
「ちゃんと申告しているから大丈夫」では安心できません。問題は申告の正確さだけでなく、「調査官の目が向きやすい構造になっているかどうか」です。
理由5:業種平均から外れた利益率
調査官は業種ごとの「標準的な利益率」をデータとして持っています。同規模の同業他社と比べて利益率が極端に低い場合、「経費を水増ししていないか」「売上を意図的に落としていないか」という視点で見られます。
特殊な事情があれば説明できますが、説明できる準備がないと苦しくなります。申告書を作る際に「業界平均と比べてどうか」という視点を持つだけで、リスクの事前把握ができます。
理由4:交際費・役員関連支出の「根拠」が薄い
交際費や役員への支出が多い会社は、「使途不明金」や「個人消費の混入」を疑われやすくなります。年間数百万円の交際費が計上されているのに、取引先との対応実績がほとんど記録されていない——そういったケースは調査官の格好のターゲットです。
金額の多寡よりも「裏付けがあるかどうか」が問われます。日付・相手先・目的を記録する習慣を整備しておくだけで、大きく変わります。
理由3:役員報酬が「突出」している
ここからがいわゆるメインどころです。役員報酬が年間3,000万円を超えてくると、「過大役員給与」として否認されるリスクが出てきます。法人税法では、役員報酬が「不相当に高額」と判断されると、その超過分は損金として認められません。
判断基準になるのが「類似法人との比較」です。同規模・同業種の会社の役員報酬と比べて著しく高ければ、差額が損金不算入となり、追徴税額が発生します。
「自分の会社だから自分の給料は自分で決める」という感覚はよくわかります。ただ税務上は、客観的な比較基準が厳然と存在するのです。
理由2:グループ間取引の価格が「都合よすぎる」
持株会社や不動産SPCを使った企業グループを運営している社長は、ここを特に気をつけてください。グループ内の取引価格が、独立した第三者間では成立しないような価格になっていると、「移転価格の否認」という問題が生じます。
たとえばグループのA社がB社に業務委託費として年間5,000万円を支払っているが、市場相場では1,000万円が妥当——そういったケースでは4,000万円分が否認され、法人税・消費税の追徴が数千万円単位に膨らむこともあります。
グループ企業間に取引がある場合は、「独立企業間価格」の根拠を文書で整備しておくことが不可欠です。
理由1:海外スキームの「バレない時代」は終わった
最後にして、近年最も調査強化が進んでいるのが海外を絡めたスキームです。
オフショア口座、海外ファンド、節税目的の海外法人——かつては「日本の税務当局には見えない」と思われていたものが、CRS(共通報告基準)の導入によって状況が一変しました。CRSとは、参加国の金融機関が口座情報を自国の税務当局に報告し、各国間で自動的に情報交換する仕組みです。日本も2018年から本格運用しており、現在は100カ国以上がこの体制に入っています。
「海外に置いておけば大丈夫」という発想は、もはや通用しません。海外資産や海外取引がある場合は、適切な申告と専門家への相談が不可欠です。
「調査に耐えられる会社」を作ることが最大の節税
税務調査が来ること自体は、違法でも何でもありません。ただ、調査に耐えられない申告をしていると、精神的・経済的なダメージは計り知れないものになります。
この5つのうち一つでも「うちに当てはまりそう」と感じたなら、今期の決算前に顧問税理士と棚卸しをしておくことを強くおすすめします。問題が起きてから相談するより、起きないように整備する方が、コストも時間も格段に安くなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。