先日、年商10億円ほどの製造業の社長から、こんな連絡が届きました。

「資本金をずっと1億円以下に抑えて外形標準課税を回避してきたんだけど、今年から使えなくなるって本当ですか?」

本当です。しかも、すでに施行されています。

2026年4月1日、地方税法の改正が施行され、減資を使った節税スキームが実質的に封じられました。気づかないまま今期の決算を迎えると、年間で数千万円規模の追加負担が発生するケースもあります。今回は「2026年4月以降、使えなくなった・使いにくくなった」節税スキームを3つ整理します。

資本金の減資で外形標準課税を回避する手法が封じられた

最もインパクトが大きいのが、資本金減資による外形標準課税の回避スキームの封鎖です。

外形標準課税とは、資本金1億円超の法人に対して課される法人事業税の課税方式です。赤字であっても付加価値割・資本割が課されるため負担が重く、大企業の中には資本金を1億円以下に減資してこの課税を回避するケースが相次いでいました。

今回の改正では、「前事業年度に外形標準課税の対象だった法人は、資本金を減資しても引き続き課税対象とする」というルールが導入されました。要するに、「減資で逃げる」という出口が塞がれた形です。

前期時点で資本金が1億円超だった法人は、2026年4月1日以降に開始する事業年度から対象になります。実質、今期決算から適用される会社がすでに出てきており、年間の負担増は規模によっては数百万円から数千万円になることもあります。「節税のつもりで減資したのに、今さら戻せない」という状況に陥っている会社も出始めています。

海外子会社を使ったスキームへの監視が続く

次に、海外子会社を絡めた節税スキームへの当局の目が厳しくなっている点です。

CFC税制(外国子会社合算税制)は、税率の低い国に子会社を設立して利益を蓄積する行為に対し、その利益を親会社の所得として合算・課税する制度です。2017年の大幅改正以降、適用範囲は広がっており、2026年現在も国税当局の調査優先度は高い水準を維持しています。

特に問題視されているのが、経済実態のない「ペーパーカンパニー型」の海外子会社です。従業員も実質的な業務もなく、利益を移転しているだけのケースはCFC税制の対象になるだけでなく、場合によっては重加算税の対象になることもあります。

「昔から使っているから大丈夫」という感覚は危険です。BEPS(税源浸食と利益移転)に関する国際的な情報交換は年々活発化しており、当局のデータ収集能力は以前とは比べものになりません。

オペレーティングリースの損金算入に厳しい目

3つ目は、オペレーティングリースを使った節税スキームです。

航空機や船舶などを対象にしたオペレーティングリースは、早期に大きな損金を計上できる手法として、中小企業オーナーや資産家に広く活用されてきました。ただ近年は、「損金算入のタイミングが適切かどうか」という点での税務調査での指摘が増えています。

リース期間の設定や残存価値の計算が恣意的になっていないか、実質的なリスク移転が伴っているかという点が問われており、既存の契約についても今一度スキームの合法性を点検しておく必要があります。新規で検討する場合は、過去の税務調査事例を踏まえた設計が不可欠です。

今すぐ動くべき3つのアクション

現在、何らかの節税スキームを活用している経営者がとるべき行動はシンプルです。

まず、現行スキームの適法性確認。2026年4月以降の税制下で、今使っているスキームがそのまま合法かどうかを確認します。特に資本金1億円前後の会社は優先度が高いです。

次に、代替手法の選定。封じられた手法の代わりに何を使うかを検討します。退職金・中小企業倒産防止共済・不動産の組み合わせなど、合法的な節税策への組み替えを進める会社が増えています。

そして、年内の税理士レビュー。税制改正は毎年続きます。「一度設計したスキームを使い続ける」という発想を捨て、年に一度はスキームの棚卸しをする習慣をつけることが重要です。

税務調査は、スキームを使い始めてから数年後に来ることが多いです。「今は問題ない」という感覚が最も危険です。もし資本金の減資・海外子会社・オペレーティングリースのいずれかを活用しているなら、今期中に顧問税理士と確認の場を設けることを強くおすすめします。節税と脱税の境界線は、知っているかどうかで決まります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。