先日、ある社長からこんな相談を受けました。「税理士に言われてオペレーティングリースを毎年組んでいるんですが、2026年以降も同じようにやっていけますよね?」——正直なところ、その質問には慎重に答えるしかありませんでした。

年商10億を超える経営者が、合法的な節税手段として長年活用してきたオペレーティングリースや海外SPC。ところが今、その常識が大きく揺らいでいます。

2026年、何が変わろうとしているのか

2026年の税制改正に向けた議論が、ここ1年で急加速しています。財務省・国税庁の内部では「経済的実態を伴わない節税スキームの見直し」が本格的な検討事項として俎上に載っており、オペレーティングリースはその筆頭候補のひとつです。

航空機や船舶をリース対象に、帳簿上の赤字を作り出して法人税を大幅に圧縮する仕組み——かつては「合法的な節税の王道」として、資産10億円以上の法人オーナーを中心に広く使われてきました。それが今、税務当局の目線で「実態なし」と認定される事例が出始めているのです。

すでに水面下では変化が起きている

税務調査の現場では、オペレーティングリースの損金計上に対して否認するケースがじわじわと増えています。「実態なし」と判断される主な理由は、リース物件の実物が日本国内に存在しない、投資家側がリスクをほとんど負わない設計になっている、といったものが中心です。

そして見落とされがちなのが「組み戻し」の問題です。オペレーティングリースは最初に大きな損金を作れる反面、期間終了時には収益の計上が必要になります。つまり「税金を先送りしているだけ」であって、恒久的な節税ではありません。それが改正によって、先送りのメリットだけを失うリスクがある。これは相当に痛い話です。

実際、年2億円以上の損金計上を続けてきた社長が、改正後に一括で追徴課税を受けるシナリオは十分に現実的です。

海外SPCも例外ではない

海外のSPC(特別目的会社)を使ったスキームも、同様に見直しの射程に入っています。

タックスヘイブン対策税制(CFC税制)の強化や、グローバル最低税率15%の導入に伴い、海外法人を使った節税の余地は年々狭まっています。さらに、国税庁は国際的な情報交換の仕組みを整備しており、海外口座や海外法人の情報が自動的に日本の税務当局に届く体制が整っています。「海外に移せば見えない」という時代は、もう終わっているのです。

今から動ける「正攻法の節税」が残っている

結論から言うと、今期中に税理士と一緒に代替戦略を組み直すことです。オペレーティングリースや海外SPCに頼らなくても、法人税を圧縮できる選択肢は意外なほど多く残っています。

経営セーフティ共済は掛け金の全額が損金算入でき、中小企業経営強化税制を活用した設備投資では取得価額の100%を初年度に損金算入できます。退職金を見越した役員報酬の設計見直しも、長期的な節税効果が高い手段のひとつです。

これらは税務調査に強く、かつ改正リスクの低い正攻法です。グレーゾーンのスキームで2億円を節税するより、正攻法で1億円確実に節税するほうが、長期的に見れば経営の安定につながります。

「確定してから動く」では遅すぎる

税制改正の内容が確定してから動こうとしても、手遅れになっている可能性があります。改正は翌年4月施行が基本ですが、場合によっては告示から数ヶ月で適用開始になるケースもある。既存のオペレーティングリース契約を解約するにも、一定の手続き期間が必要です。

「今期はもう間に合わないから来期考えよう」を繰り返していると、気づいたときには改正後の世界に放り込まれることになります。まずは今使っているスキームが2026年以降も有効かどうかを、専門家に点検してもらうことをおすすめします。その一歩が、数千万円単位の損失を防ぐことにつながるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。