先日、ある製造業の社長から電話がかかってきました。「来月決算なんですが、例年お願いしていたアレが今年は使えないって顧問税理士に言われて……急に穴が空いた感じがして」。

その「アレ」が何だったのか、社長はちょっと言いにくそうにしていましたが、話を聞いていくうちにピンとくるものがありました。2026年は、長年「定番の節税手法」として使われてきたスキームが、複数同時に機能しなくなる年なのです。

数年前まで「これがあれば3億は節税できる」と言われていた手法が、今では追徴課税のリスクを抱えた地雷になっているものもあります。手遅れになる前に、現状を整理しておきましょう。

航空機・船舶への投資「オペレーティングリース」が消えていく

まず注意してほしいのが、オペレーティングリースです。航空機や船舶に出資し、初年度に数億円規模の損金を計上できる仕組みとして、長らく高額納税者の定番手法でした。

この手法のポイントはシンプルで、損金算入のタイミングとキャッシュインのタイミングがずれることで課税の繰り延べが生まれます。合法的なスキームではありましたが、2026年時点では組成案件の数が極端に絞られており、「使いたくても使えない」という状況になっています。

コロナ以降の航空需要の変動や船舶市況の変化が、組成側のリスク管理を難しくしていることが背景にあります。「数億の損金を今期に落としたい」と考えても、案件自体が市場に出てこないのです。これまでこの手法に依存していた方は、代替手段の検討が急務です。

「保険で節税」はもはや昔話

次に挙げたいのが、大型法人保険を使った節税です。2019年の国税庁通達によって全額損金算入が事実上封じられましたが、「多少でも効果がある」として惰性で契約を続けているケースが非常に多い印象があります。

現在の制度では、解約返戻率のピーク時期に応じて損金算入割合が決まりますが、かつての「全額損金で一気に落とす」という効果はなくなっています。さらに、既存契約の中には、解約タイミングと税務処理の関係を正しく把握していないまま放置されているものも見受けられます。

問題なのは、契約時の節税効果の説明だけを頭に残したまま、現在の実態を確認していないケースです。毎年保険料を払い続けながら、税務的なメリットがほぼない状態になっている可能性があります。既存契約は一度、税理士と一緒に棚卸しする価値があります。

最も危険:海外SPC・タックスヘイブンの活用

そして、最も注意が必要なのが、海外SPC(特別目的会社)やタックスヘイブンを使った節税スキームです。

かつては「3億を超える節税効果がある」と言われたスキームですが、BEPSと呼ばれる国際的な税源浸食・利益移転への対策が各国で強化されており、日本でも税制が着実に整備されてきました。その結果、2026年現在、こうしたスキームへの税務調査・摘発が急増しています。

怖いのは、「節税できている」と思っていた3億円超の金額が、まるごと追徴課税の対象になるケースです。加算税・延滞税が上乗せされれば、当初の節税額をはるかに超える負担になることもあります。

海外スキームは制度の複雑さゆえにグレーゾーンに見えることもありますが、税務当局の解釈が変われば一瞬でブラックゾーンに転落します。現在進行中の案件があれば、必ず顧問税理士——できれば国際税務に強い専門家——に現状の確認を依頼してください。「まだ大丈夫だろう」という判断を、自分一人でしてはいけません。

「去年と同じ」が通用しない時代に

節税は「一度決めたら毎年同じ」ではありません。税制は毎年改正され、かつて有効だった手法が使えなくなったり、リスクが高まったりします。2026年はその変化が特に大きく、決算直前に手遅れと気づくパターンが増えています。

今期の決算を迎える前に、現在使っている節税手法が本当に今も有効かどうか、税理士と一緒に確認する時間を作っておくことをおすすめします。「例年通り」ではなく「今年の基準で有効か」を問い直すことが、3億円の追徴課税リスクを防ぐ最短の道です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。