先月、顧問先のある社長からこんな一言をもらいました。「先生、うちの節税、まだ大丈夫ですよね?ニュースで税制改正のこと出てたんだけど……」と。

年商15億円規模の建設業の社長で、数年かけてしっかりした節税の仕組みを積み上げてきた方です。その言葉を聞いて「今すぐ確認しましょう」と即答しました。2026年の税制改正は、これまでとは少し毛色が違う変化があったからです。

その社長との話を振り返りながら、消えたスキームと残っている手段を整理してお伝えします。

防衛特別法人税の新設——静かに始まった実質増税

2026年4月から「防衛特別法人税」が課されるようになりました。「防衛費の財源確保のために」という名目ですが、会社経営の観点からはシンプルに「法人税の上乗せ」です。

仕組みはこうです。法人税額から500万円を差し引いた残りの金額に対して、4%が追加で課されます。

具体例で見ると、法人税が3,000万円の会社なら(3,000万円 − 500万円)× 4% = 年間100万円の追加負担になります。

「100万円ならまだいい」という反応をする社長もいます。でも、本当の問題は金額の大小ではなく、「今まで節税でどれだけ圧縮できていたか」という文脈で見たときの影響です。

さまざまな節税スキームを駆使して法人税を大幅に圧縮してきた会社が、それでも残る税額に対してさらに追加課税される構造になっています。節税の「上がり」が少し遠くなったイメージです。年100万円の追加負担が10年続けば1,000万円。決して無視できない金額です。

まずは自社の法人税額をベースに、実際の追加負担額を試算しておくことをおすすめします。

事業承継税制の特例措置——入口がひっそりと閉まった

より深刻な変化は、もう一つのスキームにあります。「事業承継税制の特例措置」です。

この制度は、後継者に自社株を引き継ぐ際に発生する相続税・贈与税を猶予・免除できる仕組みです。中小企業の自社株は評価額が億を超えることも珍しくなく、それをそのまま相続すると高額の税負担が発生します。この特例を使えば、その負担を実質的にゼロ近くまで抑えられていました。

ところが、この制度を利用するための「特例承継計画」の提出期限が2026年3月31日で終了しました。

今この記事を読んでいる方が「うちもやろう」と思っても、新規申請はもう受け付けていません。「いつかやろう」と先送りにしていた社長にとっては、選択肢がひとつ完全に消えたことを意味します。

一方、すでに計画を提出済みの会社は引き続き利用できます。ただし、猶予を確定させるための贈与・相続の実行手続きは、2027年12月末までに完了させる必要があります。「計画だけ出して一安心」という状態の方は、残り期間を逆算して今すぐスケジュールを具体化してください。この手続きは複数のステップがあり、税理士・弁護士との連携も必要なので、早めの動きが肝心です。

まだ使える手段——「今できる節税」を棚卸しする

「じゃあ、これからは節税できないの?」という心配は不要です。2026年時点でも有効な手段はいくつか残っています。

代表的なのが持株会社の活用です。オーナーが持株会社を設立して株式を集約することで、相続対策や所得分散に活用できます。制度の変化に左右されにくい、構造的な対策です。

M&Aを活用したスキームも選択肢のひとつ。会社を売却・再編する過程で節税効果を得る方法で、規模感のある会社には有効な場面があります。

オペレーティングリース(航空機・船舶リース)も、現時点では引き続き活用できる手段です。ただし投資額が大きいため、資金繰りや税務状況に合っているかを確認したうえで検討することが大切です。

毎年「使える手段」を棚卸しするクセをつける

今回の改正で改めて感じてほしいのは、「節税は一度組んだら終わり」ではないということです。

税制は毎年見直され、使えるスキームが変わります。数年前に組んだ仕組みが今も最適かどうかは、定期的に確認しないとわかりません。理想は、決算の3〜4ヶ月前に税理士と「今期の節税棚卸し」をする時間を確保することです。「去年と同じでいいよね」という感覚で放置していると、今回のように「気づいたら制度が終わっていた」という事態になります。

事業承継をぼんやりと先送りにしている社長は、特に今すぐ動いてください。残っている手段にも「タイムリミット」があるものが少なくありません。まず顧問税理士と向き合う1時間を、今期中に確保することからはじめてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。