先日、ある社長からこんな連絡をもらいました。「10年前に顧問税理士に勧められて入った法人保険、そろそろ解約しようと思ったら『今は絶対ダメ』と止められたんですが、どういうことですか?」
この手の相談、最近本当に増えています。2024年以降、かつて「節税の定番」とされてきた法人保険が、むしろ会社の財務を直撃するリスクになっているのです。
「節税のはずが」なぜ損になるのか
2024年に入ってから、法人保険の税務上の取り扱いに関する規制がさらに厳しくなりました。それ以前から段階的に締め付けは強まっていたのですが、今の最大の問題は「解約返戻金が戻ってくるタイミング」にあります。
解約して戻ってきたお金は、その期に「益金」として一括計上されます。たとえば積み立てた保険を解約して5,000万円が返ってきた場合、その5,000万円がそのまま課税所得に上乗せされるイメージです。
結果として、その期の法人税が想定の2〜3倍以上になるケースが続出しています。「節税のために入ったのに、逆に税金が増えた」となれば、目も当てられません。
最も危険な「タイミングのズレ」パターン
よくある失敗の典型例をひとつご紹介します。
加入時の設計は「社長が退職するタイミングで保険を解約し、解約返戻金を退職金で相殺する」というものでした。退職金は損金算入できるので、益金と相殺すれば税負担は軽くなる、というロジックです。理論上は正しいです。
ところが、役員交代の時期は想定通りにいかないことが多い。後継者候補の離脱、体調の問題、M&Aの話が出て退職を延期、など理由はさまざまです。そうなると「保険の解約適正期は来た」のに「退職金はまだ払えない」という状況が生まれます。
ここで解約してしまうと、5,000万〜1億円規模の益金だけが計上され、相殺できるものが何もない。通常の利益と合算されて、法人税が一気に数千万円増える。こういう事態が実際にあちこちで起きているのです。
問題は「加入時」より「出口設計」にある
法人保険をめぐる失敗の根本は、加入時の損金算入効果ばかりに目が行き、解約時の益金処理を甘く見ていたことです。
入口では確かに損金になります。でも出口でその多くが戻ってくる。差引ゼロどころか、規制強化後は出口のほうが不利になるケースまで出てきています。
今、法人保険を持っている社長が確認しておきたいのは次の3点です。
- 解約返戻金のピーク(解約適正期)はいつか
- そのタイミングで退職金や他の損金と相殺できる設計になっているか
- 現行の税務規制に照らして、その設計がまだ有効かどうか
これは加入時の設計書を引っ張り出すだけでは判断できません。2024年以降の改正が適用された前提で、顧問税理士と一緒に再計算する必要があります。
今から動けばまだ間に合う
解約のタイミングを変えるには、事前に1〜2年の準備期間が必要なことが多いです。退職金の計画を立て直したり、他の損金処理と組み合わせたりするには、余裕が要るからです。決算直前に気づいても、もう手が打てない、というケースは少なくありません。
逆に言えば、今から動けばまだ間に合う会社は多い。「節税になっているから大丈夫」と思い込んでいる社長ほど、一度立ち止まって現状を確認してほしいのです。
担当の税理士に「うちの保険の出口設計、今の規制で問題ないですか?」と一言聞いてみてください。それだけで、数千万円の税負担の差が生まれる可能性があります。今期中に動いておくことを強くお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。