「退職金を3億円受け取る予定なんですが、どうすれば税金を最小限にできますか?」

先月、創業30年の製造業オーナー社長からこんな相談を受けました。長年かけて積み上げてきた法人の資産を、いよいよ自分に還元する時期が来た——そんな節目のタイミングです。

退職金は、所得税の中でも特別に優遇された受け取り方ができる仕組みです。でも、事前の設計が不十分なままだと、何千万円もの税金を余分に払う羽目になります。今回は、退職を考え始めた法人オーナーが必ず確認しておきたい節税手法を、3位から順にお伝えします。


3位:退職所得控除は「役員歴」で決まる

退職金は通常の給与とは別枠で課税されます。その中心にあるのが「退職所得控除」という仕組みです。

勤続20年以下の分は1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円が控除額として加算されます。たとえば役員として35年勤続していれば、控除額は800万円(20年分)+1,050万円(超過15年分)で、合計1,850万円になります。

ここで多くの社長が見落とすのが「役員歴の正確な長さ」です。会社を設立して何十年も経営していても、登記上の役員就任から退任までの期間が控除の基準です。最初の数年を従業員として働いていた場合や、子会社を別に立ち上げて役員を兼任していた場合など、想定より控除が減るケースは珍しくありません。

まずは自分の役員就任日を登記で確認するところから始めましょう。


2位:功績倍率方式で退職金の「上限」を正しく設計する

退職金の金額は法人側が自由に決められるわけではありません。「不相当に高い」と税務署に判断されると、損金算入が認められず、法人側で課税されてしまいます。

この判断の基準として広く使われているのが功績倍率方式です。

計算式はシンプルで、「最終月報酬 × 勤続年数 × 功績倍率」で算出します。代表取締役の場合、倍率は2〜3倍が一般的な目安とされています。月報酬100万円、勤続30年、倍率3倍なら、計算上は9,000万円が適正範囲の射程に入ります。

倍率に法定上限はありませんが、同業他社の水準から大きく外れると問題視されることがあります。役員退職慰労金規程を事前に整備し、算定根拠を明文化しておくことが、税務調査でのリスクを下げる鍵になります。規程のない会社は、今すぐ整備することをおすすめします。


1位:法人保険との組み合わせが節税の本命

ここまでの2つだけでも効果は十分ありますが、法人保険と組み合わせることで節税効果はさらに大きくなります

在任中に保険料を損金として処理しながら原資を積み立てていき、退職のタイミングで解約して解約返戻金を退職金に充てる——というのが基本的な設計です。

積み立て期間は法人の税負担を減らし、受け取る際には退職所得控除が適用された上に「2分の1課税」という優遇を受けられます。同じ金額を役員報酬として毎年受け取るよりも、手取りが大きく変わるのは当然です。

ただし、2019年の国税庁通達以降、保険商品ごとの損金算入ルールが見直されています。どの商品がどう扱われるかは商品設計によって異なるため、顧問税理士と一緒に検討するのが必須です。


今期中に確認しておくべき3つのこと

退職の時期が近づいてから対策を始めても、役員歴は遡って伸ばせません。法人保険も加入から解約まで一定の期間が必要です。早めに動くほど選択肢が広がります。

今すぐ確認しておきたいのは、登記上の役員就任日、役員退職慰労金規程の有無、そして法人保険の加入・積み立て状況の3点です。

まだ退職金の設計に着手していないなら、今期中に顧問税理士と一度すり合わせておくことを強くおすすめします。準備を始めるのに「早すぎる」ということはありません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。