先日、年商12億円の建設会社の社長から、こんな連絡が入りました。「決算まであと3週間なんですが、今期は利益がかなり出てしまって……何かできることはありますか?」
こういったご相談は毎年この時期に増えます。そして正直に言うと、3週間では動けるものと動けないものがあります。
特に大型の節税手法には、決算日という絶対的な締切があるのです。
1億円が消えるタイムリミット
年商10億円を超えてくると、使える節税スキームの幅がぐっと広がります。なかでも代表格が「JOL(ジャパンオペレーティングリース)」です。
JOLは航空機や船舶などのリース事業に出資するスキームで、1億円の出資に対して初年度に5,000万〜8,000万円が損金算入できます。利益が大きく出た年に使えば、法人税の節税効果は相当なものになります。
ただしこのスキーム、当該決算月内に出資を完了していることが絶対条件です。
決算日が3月31日なら、3月31日までに出資手続きが完了していなければ、その年度の損金算入は一切認められません。4月1日に1億円を出資しても、「来期の話」になってしまうのです。
優良案件は年に2〜3件しかない
さらに難しいのが、良い案件がそもそも少ないという現実です。
JOLの優良案件(安全性が高く、損金算入率も高いもの)は、年間でも2〜3件程度しか市場に出回りません。それも取扱金融機関や専門税理士に先行情報が入り、広く案内される前に埋まってしまうことが多い。
決算前に「そういえばJOLってどうなの?」と動き始めても、良い案件はすでになく、妥協したものを慌てて選ぶか、今年は諦めるかの二択になります。
実質的な勝負ラインは決算前30日です。この時点で「今期に乗るかどうか」の判断と、案件の確保を済ませておかないと間に合いません。
法人保険も同じ構造
JOLほど大きな金額ではありませんが、法人保険についても同じことが言えます。
節税効果のある法人保険(長期平準定期保険など)は、初年度の保険料を決算期内に支払う必要があります。翌期に支払ったものは、翌期の損金として計上されます。当たり前のことですが、これが「今月中に間に合うか」という切実な問題になってくるのです。
保険会社の審査・契約手続きには最低でも2〜3週間かかります。決算1週間前に動き出して、審査が翌期にずれ込んだ——という話は珍しくありません。
「来年でいいか」の本当のコスト
こうした話をすると、「じゃあ来年こそは早めに動きます」とおっしゃる社長が多いのですが……毎年同じことをおっしゃいます(笑)。
JOLの場合、1億円出資で5,000万〜8,000万円の損金算入が可能です。法人税率30%で計算すると、1,500万〜2,400万円の節税になります。これを「来年でいいか」と5年繰り返せば、単純計算で7,500万〜1億2,000万円の機会損失です。
「今期は利益が出そうだとわかった時点」が動くべきタイミングです。決算日から逆算して、遅くとも30日前には相談を始めることが大型節税の鉄則になります。
今すぐできる3つのアクション
では具体的に何をすればいいか、整理しておきます。
まず今期の着地利益を概算することです。税引前利益がどのくらいになるかが見えなければ、どのスキームをどの規模で使うかが決まりません。経理担当者に今月中に試算を出してもらうだけでも、動きが変わります。
次に顧問税理士に相談すること。JOLや法人保険は、取扱経験のある専門家でないと適切なアドバイスができません。「先生、大型節税について相談したいのですが」と一言伝えるだけで、対応できるかどうかがすぐわかります。
そして最後にカレンダーに「決算30日前」のアラートを設定すること。来期からは早く動けるよう、今日のうちに設定しておいてください。
決算日は毎年やってきます。節税の機会も毎年あります。ただし、その扉が閉まるのも毎年同じタイミングです。まだ今期間に合う方は、今日中に税理士に連絡を入れてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。