先日、年商18億の製造業を経営する社長からこんな連絡が来ました。
「先生、固定資産税って市役所が言ってくる金額をそのまま払うしかないんですよね?」
きっかけは、5月に届いた課税明細書をたまたまじっくり眺めたこと。工場の土地と建物を合わせて年間1,400万円という数字を見て、「本当にこれが正しいのか?」と初めて疑問を持ったそうです。
この疑問、実はとても正しい感覚です。
評価額は「機械的」に決まる。だからこそミスが起きる
固定資産税は、市区町村が算定した「評価額」に税率(標準税率1.4%)をかけて計算されます。土地なら路線価や地形・接道条件、建物なら構造・築年数・床面積などをもとに、職員がほぼ機械的に算定していきます。
問題は、この「機械的な算定」に誤りが混入しやすいという点です。
たとえば、土地の形状が変形しているのに標準的な評価のまま、建物の一部を解体したのに課税台帳が更新されていない、工場の附属設備がとっくに撤去されているのにまだ課税対象になっている——こうした「見えないロス」が複数重なって、長年にわたり過払いが続いているケースが珍しくありません。
担当者も悪意があるわけではなく、単純に把握しきれていないのです。
年商10億超の企業で「3000万の過払い」は現実の話
規模が大きくなるほど、過払いの絶対額も膨らみます。
複数の土地・建物を所有する中堅・中小企業では、過大評価による過払いが年間数百万円に上るケースが多く、評価の歪みが大きい場合には年3,000万円を超える例も実際に報告されています。
毎年3,000万円を余分に払い続けているとすると、10年で3億円です。設備投資に回せたかもしれないキャッシュが、誰も気づかないまま消えていく計算になります。
「うちは普通の会社だから大丈夫」と思っている社長ほど、一度も評価を精査したことがなかったりするのです。
「不服があれば申し立てできる」制度がある
固定資産税の評価額に納得できない場合、正式に異議を申し立てる手続きがあります。「固定資産評価審査委員会への審査申出」という制度です。
市区町村に設置されたこの委員会に申出書を提出することで、評価額の再検討を求めることができます。評価の誤りが認められれば税額が下がり、場合によっては過払い分の還付が受けられることもあります。
ただし、ここに絶対に見落としてはいけない期限があります。
申出ができるのは、納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内だけです。この期間を過ぎると、どれだけ評価が不当であっても申し立てる権利を失います。
今がギリギリのタイミング
多くの自治体では、固定資産税の第1期納付書が4月下旬から5月にかけて届きます。つまり今まさに、3ヶ月のカウントダウンが始まっている状態です。
「忙しいし、来年考えよう」では取り返しがつきません。固定資産の評価替えは3年サイクルなので、申出のタイミングを逃すと次の機会まで待つことになります。少なくとも、課税明細書だけでも今週中に確認しておくことをおすすめします。
やること:まず課税明細書を出す
実務的な流れはシンプルです。
第一歩は、5月に届いた課税通知書に同封されている「課税明細書」を探すことです。手元にない場合は市区町村の窓口で取得できます。
それを専門の不動産鑑定士、または固定資産税に詳しい税理士に持ち込んで精査してもらうだけで、「この評価はおかしい」という箇所が見つかることがあります。評価のミスが確認された場合は、審査申出または現況届出によって税額の引き下げを求めていくことになります。
特に、以下のような会社は一度確認しておく価値があります。
- 複数の土地・建物を所有している
- 工場・倉庫など大型建物がある
- 土地の形状が変形・旗竿・狭小など特殊な条件がある
- 設備の一部撤去や建物の用途変更をここ数年で行った
固定資産税は毎年必ず発生するコストです。一度見直せば、その節税効果は何年にもわたって続きます。5月の課税明細書が手元にある今、ぜひ一度税理士に相談してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。