先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。
「毎年、固定資産税の通知が来るたびに、まぁこんなもんだろうと思って払ってきたんです。でも、知り合いの社長が専門家に調べてもらったら数百万が戻ってきたと聞いて、急に不安になって……」
この社長、延床5,000㎡を超える工場を複数持っています。通知書を一緒に確認してみると、過去に過払いが累積していた可能性が非常に高い状況でした。
「こんなもんだろう」が一番危ない
固定資産税の納税通知書は、毎年4月ごろ法人に届きます。工場・倉庫・商業ビルを複数保有している社長ほど、金額に慣れてしまって「毎年こんな感じ」と深く見ない傾向があります。
でも、そこに大きな落とし穴があります。
自治体が計算する固定資産の評価額は、必ずしも正確ではありません。特に不整形な土地の補正や、建物の経年劣化・改修の反映が漏れているケースが珍しくないのです。
年1000万超の過払いが発覚した実例
延床5,000㎡を超える工場を保有する社長が、固定資産税の専門家に評価内容を精査してもらったところ、2つの誤りが発見されました。
一つ目は「不整形地の補正漏れ」。土地が整形の四角形でない場合、評価額を減額する補正がかかるはずですが、それがまったく反映されていませんでした。二つ目は「建物の経年劣価の未反映」。古い設備や躯体の劣化が評価額に織り込まれておらず、実態より高い評価が何年も続いていたのです。
この2点が重なり、年間で相当額の過払いが生じていました。「気づかなければ払い続けていた」という話は、決して他人事ではありません。
取り戻せるタイミングは限られている
重要なのが、審査申出の期限です。
固定資産税の評価額に異議を申し立てるには、納税通知書が届いてから3か月以内に自治体の固定資産評価審査委員会へ審査申出を行う必要があります。4月に届いた通知書なら、期限は6〜7月ごろになります。思った以上に短い。
ここで注意点が一つあります。審査申出の対象は「評価額」のみです。税率や課税標準の計算方法には異議を申し立てられません。また、評価額への異議申立が原則認められるのは「基準年度」のみ。直近では2024年度が基準年度で、次回は2027年度になります。
今年2026年は基準年度ではないため、評価額そのものへの正面からの異議申立は難しい状況です。ただし、評価額以外の計算誤りや特例の適用漏れについては、基準年度に関わらず確認・修正を求められるケースもあります。
手元の通知書でできる3つの確認
専門家に相談する前に、今すぐ通知書で確認できることがあります。
- **土地の地積(面積)**が実際の測量値と一致しているか
- 建物の床面積が登記と一致しているか
- 昨年と評価額が変わっていない場合、経年が正しく反映されているか
これらにズレがあれば、評価額の誤りが疑われます。特に複数の物件を持っている場合は、全物件をまとめて確認するのが効率的です。
誰に相談すべきか
「固定資産税の見直し」を専門とするのは、主に不動産鑑定士や固定資産税に精通した税理士です。ただ、一般の税理士でも相談は受けてくれますが、評価額の精査まで踏み込んで対応できる人は限られています。
「うちの税理士は法人税の専門で、固定資産税まではあまり詳しくないかも」という社長は多いです。工場・倉庫・ビルを複数保有しているなら、固定資産税専門のコンサルや鑑定士に一度チェックしてもらう価値は十分あります。
費用も、成功報酬型(取り戻せた税額の一定割合)で対応している事務所が多く、初期費用ゼロで動けるケースもあります。「調べて何もなかった」では終わらない可能性の方が高いのです。
4月の通知書を「今年もこんなもんか」と流してしまう前に、一度立ち止まってみてください。複数の不動産を保有している社長にとって、固定資産税の見直しは、他の節税策と並んで費用対効果が最も高いアクションの一つです。今期中に専門家へ相談するだけで、来期以降の税負担が大きく変わることがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。