先日、年商3億円の建設会社の社長からこんな相談を受けました。「役員報酬を月300万にして頑張ってきたのに、手元に残るお金が思ったより全然少ない。何かおかしいのかな」と。
話を聞いてみると、確かによく稼いでいる。でも、稼いだお金の半分近くが税金として消えているんです。問題は稼ぐ額ではなく、役員報酬の「設計」にありました。
実は、役員報酬の組み方1つで、手取りの差が年間5,000万円規模に広がることがあります。今回は3つのパターンで比べてみましょう。
3位:月300万円の高報酬パターン
最もわかりやすいのが「とにかく役員報酬を高くする」方法です。月300万円、年収3,600万円となると、所得税と住民税の合計は実効税率で45〜50%に達します。
つまり、3,600万円稼いでも手元に残るのは1,800万〜2,000万円程度。頑張って稼いでも、半分近くが税金で消えていく計算です。
もちろん、役員報酬には社会保険や退職金の計算基礎になるという意義もあります。でも、高報酬一辺倒の戦略は、所得税の累進課税に対して無防備すぎる設計と言えます。
2位:低報酬+配当パターン
「だったら役員報酬を下げて、残りは配当で受け取ればいい」と考える社長も多いです。配当所得は分離課税で税率が一定(上場株式等は約20%)になるため、얼핏すると有利に見えます。
ただ、ここに大きな落とし穴があります。
会社側の話をすると、法人の利益が800万円を超えると実効税率は約34%になります。その税引き後の利益から配当を出すわけですから、法人税と配当課税の「二重負担」が発生するんです。
計算してみると、法人で1,000万円の利益が出た場合、税後は約660万円。それをさらに配当課税すると、手元には500〜530万円程度しか残りません。「配当の方が有利」とは一概に言えないケースが多く、期待していたほどの節税効果は出にくいのが現実です。
1位:最適報酬+経費フル活用
最も手取りが増えるのは、役員報酬を「適正水準」に設定しつつ、合法的な経費を最大限に活用するパターンです。特に効果が大きい仕組みが3つあります。
まず、社宅制度です。自宅を会社が借り上げて役員に貸す形にすると、家賃相当額の大部分を会社の経費にできます。たとえば月30万円の家賃なら、役員の実費負担が数万円で済むケースも。差額は実質的な手取り増です。
次に、出張日当です。旅費規程をきちんと整備すると、出張1日あたり一定額を非課税で受け取れます。日当は給与と異なり所得税がかからないため、月に複数回の出張がある社長なら、年間数百万円規模の差になることもあります。
そして、役員退職金です。在任中に積み上げた評価が、退職時に「退職所得控除」という強力な節税効果を生みます。退職金は他の所得と分離して計算され、しかも2分の1課税が適用されるため、同額の給与に比べて税負担が圧倒的に軽くなります。
この3つを組み合わせると、毎月の現金支出は変わらなくても「実質的な手取り」が大きく変わります。トータルで年間数千万円、長期では数億円単位の差になることも珍しくありません。
「最適解」は会社によって全然違う
ここで重要なのが、どのパターンが最適かは会社の規模・業種・役員の年齢・将来計画によって全く異なるという点です。
創業間もない30代の社長と、60代で事業承継を考えている社長では、役員退職金の積み方も報酬バランスも変わってきます。「周りの社長がやっているから」という理由で真似をすると、かえって税負担が増えるケースもあります。
また、社宅制度や日当は、きちんとした規程の整備が前提です。口約束や曖昧な運用のまま税務調査を受けると、否認されるリスクがあります。制度の導入前に文書化まで済ませておくのが鉄則です。
今期の決算前に確認しておくこと
役員報酬は、原則として期首から3ヶ月以内に決定する必要があります。期中での変更は原則として損金算入できないため、タイミングが命です。
「自分の会社の設計が正しいか不安」「もっと手取りを増やしたい」と感じているなら、決算が近づく前に一度、顧問税理士に現状を棚卸しして相談してみてください。社宅規程や旅費規程がまだ整備できていないなら、今期中に作っておくことを強くおすすめします。報酬設計は一度決めたら終わりではなく、会社の成長段階に合わせて毎年見直すもの。その積み重ねが、10年後の手元資産を大きく左右します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。