先日、年商4億円の製造業を経営するTさんから、こんな相談を受けました。「法人保険もオペレーティングリースも、顧問税理士に言われた通りにやっているのに、知り合いの社長が税務調査でごっそり追徴されたと聞いて……うちは大丈夫でしょうか」

「正しくやっているはずなのに、なぜ?」——その不安は、実はとても正当です。節税策は正しく組んでいても、「組み合わせ」と「タイミング」 によって、税務調査の的になりやすいパターンがあります。今回はその代表的な3つを、現場で見てきた事例をもとにお伝えします。

3位:法人保険の「解約タイミングミス」

法人保険は、保険料を損金算入しながら将来の退職金原資を積み立てられる、オーナー社長に人気の節税手法です。問題は、解約と退職金支払いのタイミングが1年でもズレたときに起きます。

解約返戻金が発生した年度に益金が膨らみ、退職金を別の年度に支払っていると相殺が効きません。結果として申告内容が過少になり、税務調査で指摘を受けると過少申告加算税として本来の税額の10〜15%が上乗せされます。

「退職金で相殺するから問題ない」と言い切れるのは、同一年度に両方の処理が完結しているときだけです。ところが実際には、体調不良による急な退任や、保険会社の手続き遅れなどでスケジュールが崩れることがよくあります。「想定していた通りに進まなかった」という理由は、税務署には通用しません。

2位:オペレーティングリースの「経済合理性否認」

航空機や船舶などの高額資産をリースに出す仕組みで、数千万円単位の損金を一気に作れるオペレーティングリース。うまく活用すれば強力な節税ツールですが、税務調査で問われるのが**「経済合理性」**です。

税務署は「この取引は節税目的だけで行われていないか?」という視点で精査してきます。リース収益を実際に得ている実態があるか、事業上の合理的な理由が説明できるかが焦点です。

節税目的のみとみなされると、損金算入を全額否認されるリスクがあります。数千万円を損金に落とした翌年に調査が入り、追徴課税で同額を支払った——などという事例は珍しくありません。節税が「ゼロ」になるだけならまだしも、加算税と延滞税が乗ってマイナスになることもあります。

契約時の「節税効果の大きさ」だけで判断するのではなく、「事業上の目的として説明できるか」を必ず確認してください。

1位:CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の見落とし

3つの中で最も影響が大きく、最も見落とされやすいのがこれです。海外に法人を設立し、低税率国で利益を留保するスキームを使っている社長が直面するリスクです。

CFC税制(外国子会社合算税制)では、海外法人の実効税率が20%未満の場合、その利益を日本法人に合算して課税される仕組みになっています。海外でも税金を払い、日本でも課税される——いわゆる二重課税の状態に陥ります。

「海外の税理士に任せているから大丈夫」という声をよく聞きますが、現地の税務処理と日本のCFC申告は別の話です。日本の国際税務に精通した税理士でなければ、このリスクを正確にカバーするのは難しいのが実情です。設立国・実効税率の確認、事業実態の整備、日本側の申告書への記載など、確認事項は多岐にわたります。

3つが「重なる」と、何が起きるか

本当に怖いのは、これらのリスクが同時に顕在化するケースです。法人保険、オペレーティングリース、海外法人をセットで活用している社長が、1回の税務調査で複数の指摘を受けることになります。

単体でも追徴税額が数千万円になることがありますが、3つが重なると1億円を超えるケースも報告されています。節税のために使ったはずの手法が、逆に財務を圧迫する結果を招く——皮肉な話ですが、現場ではそれが現実に起きています。

今すぐ確認しておくべきこと

節税策を複数組み合わせている社長が、今日から着手できることがあります。

まず、法人保険については解約予定時期と退職金支払い時期を今一度スケジューリングし直してください。次に、オペレーティングリースの契約書に「事業目的」が明確に記載されているか確認を。そして、海外法人がある場合は設立国の実効税率とCFC適用の有無を、日本の国際税務に詳しい税理士に確認してもらうことをおすすめします。

節税策そのものを「今すぐやめる」必要はありません。ただ、「知らなかった」では済まないのが税務調査の世界です。決算期直前ではなく、今のタイミングで全体像を棚卸しするのが、最もコストパフォーマンスの高いリスク管理です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。