「先生、うちの役員報酬って、いくらに設定するのが正解なんですか?」
先日、年商3億円の建設会社の社長からこんな質問を受けました。創業10年、ようやく会社が軌道に乗ってきたタイミングで、自分の報酬設計を一度きちんと見直したいと言うのです。
実は、役員報酬は「いくら受け取るか」だけの話ではありません。設計1つで、手取りが数千万円規模で変わることもある、経営者にとって最重要の意思決定のひとつです。
今日は、多くの社長が見落としている3つの報酬設計テクニックを、効果の大きい順にご紹介します。
3位:役員社宅で家賃を会社の経費に変える
手軽に始められるのが、役員社宅の活用です。
会社が物件を借り上げ、役員はそこに「社宅家賃」として一定額を会社に支払って住みます。この支払額は、国税庁の通達に定められた計算式で算出された「賃貸料相当額」で、市場家賃と比べると大幅に低い金額で設定できます。
たとえば、月25万円の賃貸物件に住んでいる社長が役員社宅に切り替えた場合、自己負担は通達計算で月5〜7万円程度になることも珍しくありません。差額の月18〜20万円は会社の損金として計上できるため、年間200万円を超える節税効果が生まれます。
「社宅って大企業がやるものでしょ」と思いがちですが、そんなことはありません。法人であれば規模を問わず活用できる仕組みです。
2位:出張日当で手取りを非課税で底上げする
次に効果的なのが、出張日当の設計です。
会社が就業規則(旅費規程)に「出張1回あたり3万円」と定めれば、それは社長個人の所得にはなりません。会社の損金になり、かつ受け取った本人にも課税されない、非課税の実質的な給与補填です。
月4〜5回の出張を年間50回こなす社長なら、年150万円を非課税で受け取れる計算です。法人実効税率34%で試算すると、税負担の軽減は合計約50万円。書類1枚の整備で実現できる節税として、コストパフォーマンスは抜群です。
ただし、旅費規程に定める金額は「社会通念上相当な範囲」でなければなりません。国内日帰り出張1回で10万円などは否認リスクが高くなります。同業他社の相場や、従業員との均衡を意識した設計が大切です。
1位:役員報酬の「最適ゾーン」を狙い撃ちにする
そして、最も大きな効果をもたらすのが、役員報酬そのものの額の最適化です。
役員報酬が高ければ高いほど、個人の所得税率が上がります。所得が4,000万円を超えると、所得税45%+住民税10%で合計55%が税金として持っていかれます。手元に残るのはわずか45%です。
一方、役員報酬を下げて会社に利益を残すと、今度は法人に実効税率34%前後がかかります。
この2つの税率が交わる「最適ゾーン」こそ、手取りが最大化するポイントです。一般的には、個人の所得が900万〜1,800万円あたりから税率の逆転が起き始め、そこから先の稼ぎは個人で受け取るよりも法人に残したほうが有利になるケースが多い。
ただし、このゾーンは家族構成、配偶者への給与設定、社会保険料の扱い、業種や資本金規模によっても変わります。「誰でも報酬1,000万円が正解」という単純な話ではありません。
3つを組み合わせると、差は数千万円になる
役員社宅、出張日当、そして報酬の最適ゾーン設計。この3つを重ねることで、年間の手取り差は数千万円規模になることもあります。
冒頭の建設会社の社長には、役員報酬を現在の2,400万円から1,500万円に引き下げて差額を内部留保する設計を提案しました。あわせて社宅への切り替えと旅費規程の整備を並行して進めると、手取りベースで年400万円以上の改善が見込めました。
「こんなに変わるんですか」と、社長は目を丸くしていました。
今、役員報酬を「なんとなく」で決めているなら、一度立ち止まって見直してみてください。社宅や旅費規程の整備は今期中に着手できれば、その期から効果が出ます。まずは「うちはどれが使えるか」を税理士に相談することから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。