先日、年商15億ほどの製造業の社長から、こんな連絡をいただきました。
「三原さん、固定資産税って、そのまま払い続けるしかないと思っていたんですが……本当に返ってくるんですか?」
返ってきます。しかも、最大5年分まで遡って。
この社長の場合、所有する工場の床面積が登記上の記録と実態でズレていたことが判明し、最終的に350万円超の返還を受けることができました。固定資産税の「払いすぎ」は、決して珍しいケースではないんです。
評価額のミスは「向こう側」で起きている
固定資産税は、市区町村が毎年「評価額」を算出して課税します。評価の根拠になるのが、土地の地目や面積、建物の床面積、構造(木造か鉄骨かRC造か)、築年数といった情報です。
問題は、この情報が誤っているケースが少なくないことです。
増築や間仕切り変更で実際の面積が変わったのに、台帳上の数字が古いままになっている。倉庫として使っているのに「事務所」扱いで評価されている。経年による減価が正しく反映されていない——こういった誤登録が、長年にわたって課税の根拠になり続けることがあります。
年商10億を超える法人でも、こういったミスが放置されているケースは珍しくありません。気づいていないだけで、毎年数百万円を余分に払い続けている会社は相当数あると思っています。
「固定資産評価審査申出制度」というバルブがある
評価の誤りを是正できるのが、「固定資産評価審査申出制度」という仕組みです。
市区町村の固定資産評価審査委員会に申し出ることで、評価の見直しを求めることができます。誤りが認められれば、地方税法の時効に基づいて過去5年分まで遡り、過払い分が返還されます。
ただし、この制度には一つだけ厳格な期限があります。
申し出ができるのは、納税通知書を受け取った日から3か月以内だけです。
毎年4〜5月にかけて、固定資産税の納税通知書が届きます。この封筒を開けて金額を確認し、そのまま引き出しにしまっていませんか? あの3か月が、評価の誤りに異議を唱えられる唯一のウィンドウです。
精査してみると、驚く数字が出てくる
専門家が評価内容を精査すると、誤りのパターンはいくつかに集約されます。
- 増改築後に床面積の修正申請をしていない
- 取り壊した附属設備が帳簿上に残っている
- 土地の地目変更が反映されていない
- 構造区分の誤り(木造なのに軽量鉄骨として評価されている)
こういった誤りが複数の建屋で積み重なると、年間数百万円の過払いになることがあります。5年遡れば、その合計は1,000万円を超えることも珍しくありません。
先ほどの製造業の社長も、最初は「大した金額じゃないでしょ」という感覚でした。ところが精査してみると、床面積のズレが複数の建屋で確認され、5年分で350万超になった。「こんなに戻ってくるとは」と、正直驚いておられました。
「高い気がする」だけでは通らない
一点、注意が必要なのは、申出制度はあくまでも「評価額の誤り」を是正するための仕組みだということです。
単に「固定資産税が高すぎる」という不満は申出の理由になりません。どの数値が、何を根拠に誤っているのかを具体的に示す必要があります。
そのため、窓口に感覚だけで乗り込んでも話は進みません。不動産鑑定士や固定資産税に詳しい税理士と連携して、根拠を整えた上で動くのが現実的です。費用対効果を試算してから依頼するのが賢いやり方です。
今年の封筒、まだ間に合いますか?
まずは手元の納税通知書を確認してみてください。所有する不動産の種類、面積、評価額の内訳が記載されているはずです。
気になる点があれば、市区町村の固定資産税担当窓口で「名寄帳(なよせちょう)」の開示を請求できます。評価の詳細な内訳を確認できる公式書類で、これが精査の出発点になります。
工場・倉庫・オフィスビルを所有している法人オーナーの方は、今期の通知書が届いたタイミングで、一度専門家に精査を依頼してみてください。3か月という窓口は、気づいたときには静かに閉まっています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。