先日、大阪で倉庫と事務所を複数棟所有している製造業の社長と話していて、こんな一言が出てきました。
「固定資産税って、毎年そのまま払うもんやと思ってたけど、違うんですか?」
違います。場合によっては、これまで払いすぎていた税金を取り戻せる仕組みがあります。しかも、気づかずに払い続けている会社がほとんどです。
固定資産税の評価額は「正確」とは限らない
固定資産税は、市区町村が算定した「固定資産評価額」をもとに計算されます。土地なら路線価や地価変動、建物なら構造・築年数などを基準にしますが、この評価額が実際の市場価値と大きくずれているケースは珍しくありません。
特に注意が必要なのは、こういった物件です。
- 築年数が古く、実態以上に価値が残っているとみなされている建物
- 周辺の地価が下落しているのに評価が据え置かれた土地
- 接道条件が悪い・形状が不整形で使い勝手が悪い土地
- 工場・倉庫など特殊用途の建物
評価は3年に一度の「評価替え」で見直されますが、その間はたとえ市場価値が下がっていても評価額は変わりません。しかも、行政側が算定を誤っていても、申し出がなければ訂正されることはない──これが現実です。
「審査申出」という知られざる手段
固定資産の評価額に不服がある場合、固定資産評価審査委員会に審査申出を行うことができます。
この制度は、評価の誤りや不合理な点を第三者機関に判断してもらうためのもので、申立が認められれば評価額が引き下げられ、過払い分は還付されます。
申立の成功率は約30%とされています。「3割しか通らない」と見るか、「申し出た人の3人に1人は取り戻している」と見るか。少なくとも、申し出なければ還付はゼロです。
大型不動産を持つオーナーほど、見直しによる節税効果は大きくなります。年間500万円の固定資産税を払っている場合、評価額が10%でも引き下げられれば、年50万円の節税です。3年間放置していれば150万円の差になります。
期限は納税通知書から3ヶ月以内
ここが最も重要なポイントです。審査申出には締め切りがあります。
固定資産税の納税通知書が届いた日の翌日から3ヶ月以内に申し出なければなりません。この期間を過ぎると、その年の評価については一切争えなくなります。
納税通知書は一般的に4〜6月頃に届きます。受け取ったタイミングで評価額を確認するクセをつけておくことが大切です。
申出の大まかな流れはこうなります。
- 納税通知書を受け取り、固定資産評価証明書・課税明細書を入手する
- 不動産に詳しい税理士や不動産鑑定士に評価の妥当性を確認してもらう
- 鑑定評価書など根拠となる資料を準備する
- 市区町村の固定資産評価審査委員会に申出書を提出する
- 審査結果(決定)を受け取る
専門的な資料を揃える必要があるため、不動産評価に詳しいプロのサポートが実質的に欠かせません。逆に言えば、専門家に依頼さえすれば、社長自身の手間はそれほどかかりません。
2027年は見逃せないタイミング
固定資産税の評価替えは3年ごとに行われます。次回の評価替え年度は2027年です。
評価替えのタイミングは、評価額を根本から見直す絶好の機会です。評価替えにあわせて不動産の状態・周辺相場をきちんと確認し、評価額に疑問があればすぐに申出の検討に入れるよう、今から不動産に強い税理士と関係を作っておくのが得策です。
もちろん、評価替え年度でなくても、毎年の通知書受取後3ヶ月が申出の窓口です。「もしかして高すぎる?」という物件があれば、今年の通知書が届いた時点で動くことも十分意味があります。
知っている社長だけが静かに得をしている
正直なところ、この制度を知っている社長は多くありません。固定資産税は「毎年決まった額を払うもの」という認識が一般的で、評価額に疑問を持つ人はほとんどいません。
だからこそ、知っている社長が静かに得をしています。
複数の物件を持ち、固定資産税が年間数百万円を超えているなら、一度評価額の妥当性を確認してみることをおすすめします。「払いすぎていなければそれでいい」くらいの気持ちで専門家に相談してみると、思わぬ過払いが見つかることがあります。
2027年の評価替えを前に、今から不動産評価に詳しい税理士と動き始めておくのが、最も後悔の少ない選択です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。