先日、顧問先の社長から夜遅くにLINEが届きました。「来月、税務調査の事前通知が来ていて…外注費の書類がほとんど残っていないんですが、どうすればいいですか?」
正直に言います。このパターンで調査がすんなり終わる会社は、ほとんどありません。問題は書類がないことではなく、「なぜ最初から整えていなかったか」に尽きるからです。
税務調査官は、申告書を見た瞬間にどこを突くかをある程度絞っています。経費の中でも、特定の3項目は「とりあえず確認する」定番になっています。今日はその3つを、実際の調査の肌感覚を交えてお伝えします。
第3位:交際費の「1項目漏れ」でまるごと否認
飲食費の経費計上は、2024年4月の改正で少し使いやすくなりました。参加者1人あたり1万円以下であれば、交際費として計上せず一般的な費用として処理できるようになったのです。
ただ、「使いやすくなった」という認識が、むしろ落とし穴になっています。
領収書1枚に、次の5項目がすべて揃っていないと、調査官に即座に指摘されます。飲食した年月日、参加者全員の氏名と会社との関係、参加者の人数、飲食にかかった費用と店の名称・所在地、そしてその飲食が事業に関係する理由。
「領収書はある」「金額も合っている」だけでは不十分です。参加者の名前が書いていないだけで否認対象になります。接待のあと「誰と行ったっけ?」と思い出しながら書くような運用は、今期中に改めてください。
第2位:プライベート経費の混在は「重加算税」直行コース
「家族と沖縄に行ったが、一日だけ取引先に顔を出したから出張費で」というケース、笑えないほど多く見てきました。
税務調査でこの種の経費が発覚した場合、単純な申告ミスとは扱われません。意図的に私的な支出を会社の経費に紛れ込ませたと判断されると、「仮装・隠蔽」として重加算税の対象になります。
通常の過少申告加算税が10〜15%であるのに対し、重加算税は35%。しかも延滞税も別途かかります。10万円の経費を誤魔化して、最終的に4〜5万円の追徴を受けた社長を何人も知っています。
「バレなければいい」という発想で続けていると、いつか必ずその請求が来ます。家族旅行は家族旅行として、個人の出費できちんと処理してください。
第1位:外注費の「実態」が証明できない
これが最も深刻です。税務調査での指摘率は68%とも言われており、外注費の金額が大きい会社はほぼ間違いなく確認されます。
「ちゃんと仕事をしてもらっている」という事実があっても、それを証明できなければ経費として認められません。調査官が見るのは、契約書・成果物・振込記録の3点です。
業務の内容と報酬額が明記された契約書、実際に何を納品してもらったかがわかる成果物、そして支払いが確認できる通帳の記録。この3点が揃っていない外注費は、「実態がない架空取引では?」と疑われます。全額否認されると、その分の税金がそのままかかってくるわけですから、金額が大きいほど打撃も大きい。
特に個人への外注は注意が必要です。「知り合いにお願いしているから口頭で」という関係性だと、書類がまったく残らないまま数年分の取引が積み上がることがあります。
今期中に確認してほしい3つのこと
税務調査の通知が来てから動いても、手遅れなことがほとんどです。書類は「あとで整理しよう」と思っていると、永遠に整理されません。
今すぐできることは3つだけです。過去半年分の飲食費領収書を出して5項目が揃っているか確認すること、外注を依頼している先との間に契約書と業務報告のルールを作ること、家族の費用が一切法人経費に含まれていないか経理担当者と確認すること。
これだけで、調査官が「ここは整っているな」と感じる会社になれます。税務調査は「疑わしい会社をより深く掘る」構造です。入口で引っかからなければ、それだけ早く終わります。
外注費の書類整備や交際費の管理ルールについて迷っているなら、今期の決算前に顧問税理士へ相談しておくことを強くおすすめします。一度仕組みを作ってしまえば、あとは運用するだけですから。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。