先日、年商10億円規模の建設業の社長から、こんな一言をもらいました。「税務調査って、うちみたいな規模になると本格的に来るんですかね」。
その社長、決算書は毎年きれいにまとめていて、大きな問題はないという自信があったようです。でも規模が大きくなるほど、調査官が「ここは確認すべき」と判断するポイントも増えていきます。売上が少なかった頃は見逃されていたことが、10億円を超えると一気に照準に入ってくるのです。
今日は、年商10億円規模の会社が税務調査で最初に目をつけられやすい3つのポイントをお伝えします。
第3位:交際費の証憑不備——調査官が真っ先に開く引き出し
税務調査が始まると、調査官がまず手を伸ばすのが交際費の領収書ファイルです。これは経験のある税理士なら誰でも知っている「調査の定石」です。
飲食費が1人あたり1万円以下であれば、交際費として損金算入できる制度があります。ただし条件があります。飲食の年月日、参加した人の氏名と人数、その人たちとの関係性、店の名称と所在地、そして業務上の目的——この5項目をきちんと記録しておかなければなりません。
「参加者:取引先一同」「目的:接待」といった雑な記録では、調査官に全額否認されるリスクがあります。年商10億円規模になると交際費の絶対額も膨らむため、少しの証憑不備が大きな追徴課税につながります。
交際費の領収書には「誰と・なぜ・どこで」を必ず書き添える習慣を、今期から会社全体で徹底しておくことをおすすめします。
第2位:役員退職金の功績倍率——「根拠」を持っていますか?
役員が退職するタイミングで、多くの会社が活用するのが役員退職金です。適切に設計すれば非常に有効な節税策ですが、税務調査で否認されるケースも後を絶ちません。
問題になるのが「功績倍率」です。退職金の適正額は「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で計算されますが、この倍率が2〜3倍の目安を超えると「不相当高額」として否認リスクが一気に高まります。
年商10億円規模になると役員報酬そのものも高くなっているケースが多く、最終報酬月額が高い、勤続年数が長い、倍率も高めに設定している——この三つが重なると、退職金が数億円規模になることもあります。そこで税務署に「なぜこの倍率なのか」と問われたとき、根拠を示せるかどうかが分かれ目です。
同業他社の事例や過去の裁判例をもとに、倍率設定の根拠資料を今のうちに整理しておきましょう。退職が近づいてから慌てても、できることは限られてしまいます。
第1位:同族間の低廉取引——これが一番見つかって、一番取られる
追徴課税の金額が最も大きくなりやすいのが、このケースです。
グループ会社や親族が経営する会社との間で、資産の売却や業務委託を「時価より低い価格」で行っていると、税務署から低廉譲渡として指摘されます。悪質と判断された場合には重加算税35%が課される可能性もあり、一度の調査で会社の資金繰りが揺らぐほどのダメージになることもあります。
「グループ内のことだから、多少安くても問題ないだろう」という感覚は非常に危険です。税務上はあくまで時価取引が原則。親族会社への不動産売却、グループ会社への業務委託料の設定、子会社への資産の貸付価格——こうした取引はすべて「市場価格と乖離していないか」という視点で見られます。
年商10億円規模になると、グループ会社や関連会社との取引が自然と増えていきます。その取引の価格設定に「なんとなく」が入り込んでいないか、今一度確認してみてください。
3つのポイントに共通しているのは「記録・根拠・時価」の三つの言葉です。どれも「やっておけばよかった」と後悔しやすいタイプの問題です。
税務調査は、規模が大きくなれば来るものだと前提で動いておくほうが賢明です。今期の決算が終わる前に、顧問税理士と一度「うちの弱点はどこか」を棚卸しする時間を取ることを強くおすすめします。指摘されてからでは、対応できる選択肢が大幅に狭まってしまいますから。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。