「社長、この保険の税務処理、見直した方がいいかもしれません」
先日、そう告げられて青ざめたという経営者の話を聞きました。年商2億円台の建設会社のオーナーで、10年以上かけて積み上げてきた法人保険が、税務調査で約2,700万円分を否認されそうになっているというのです。
節税になると信じて毎年保険料を払い続けてきた。それが一転、多額の追徴課税リスクに変わる。こういったケースが、ここ数年で急増しています。今回は、税務調査で実際に狙われやすい法人保険の危険パターンを3つお伝えします。
3位:最高解約返戻率の区分を間違えたまま全額損金処理
2019年に法人保険の税務ルールが大きく改正されました。改正の核心は、最高解約返戻率が85%を超える保険は原則として資産計上が必要になったことです。
改正後に加入した保険でも「うちはセーフ」と思い込んで全額損金処理を続けているケースが、意外と多いのです。税務調査が入ると返戻率の計算を細かく確認されます。85%超の区分に該当するのに全額損金で申告していると、資産計上すべき差額がそのまま否認対象になります。
数年分がまとめて問題になることも珍しくなく、影響額が積み上がりやすいのがこのパターンの怖さです。
2位:名義変更プランで2021年改正前の計算式を使い続けている
かつて節税スキームとして広く使われた「名義変更プラン」。法人で加入した保険を役員個人へ低額で売却し、後に高額解約するという手法です。
2021年の通達改正で、役員への保険移転は解約返戻金相当額を基準として評価するルールに変わりました。にもかかわらず、改正前の計算式を踏襲したまま処理しているケースが残っています。
問題は、この手法が「意図的な租税回避」と見なされやすい点です。単純な計算ミスとは異なり、重加算税35%が課されるリスクがあります。追徴税額に35%上乗せされるダメージは、想像以上に重くのしかかります。
1位:保険解約と退職金の組み合わせで功績倍率を超えてしまう
最も多くの社長が驚くのが、この「退職金との組み合わせ失敗」です。
保険解約のタイミングに合わせて役員退職金を支給するのは、自体は珍しくない手法です。解約返戻金が退職金の原資になるため、資金繰り上も合理的に見えます。
問題は、退職金の金額が功績倍率の目安を大幅に超えるケースです。「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で計算する際、功績倍率は一般的に3倍程度が目安とされています。これを大きく超えると、退職金そのものが「過大な役員退職金」として否認対象になります。
さらに怖いのは、保険と退職金がセットで否認される点です。保険料の損金算入分と退職金の損金算入分、両方まとめて問題にされることがあります。これが重なると、追徴課税が3,000万円を超えるケースも実際に起きています。
法人保険は「加入時」より「出口戦略」が命
法人保険は加入時の節税効果ばかりが強調されがちですが、税務上のトラブルはほぼ例外なく「解約・退職のタイミング」で起きます。今の保険について、次の3点を確認しておいてください。
- 最高解約返戻率は何%か、正しい区分で処理しているか
- 名義変更を行った保険が改正後の基準で再評価されているか
- 退職金の想定支給額が功績倍率の目安に収まっているか
これを確認しないまま解約・退職の時期を迎えると、長年積み上げた節税効果が一気に吹き飛びます。「加入した保険がどのルールに該当するか」を今期中に顧問税理士と一度確認しておくことを、強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。