先日、顧問先の社長から突然電話がかかってきました。「税務調査に入られて、追徴が1億円を超えそうだ」と。

売上規模としては特別大きな会社ではありませんでした。ただ、よく話を聞くと、3つの典型的な問題が重なっていました。どれも「知っていれば防げた」内容です。今日はそのケースを振り返りながら、税務調査で億単位の追徴につながりやすい3大危険条件をお伝えします。


3位 役員退職金——「功績倍率3.0倍」が見えない境界線

退職金を使った節税は、社長なら一度は検討したことがある手法のはずです。ただここに、知らないと大変なことになるルールが存在します。

税務上の計算式は「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」です。問題は功績倍率の部分で、代表取締役クラスでは3.0倍を超えると否認リスクが一気に高まります。3.5倍、4.0倍に設定している会社も珍しくありませんが、超過分は損金不算入、つまり課税対象として扱われます。

さらに怖いのは、算定根拠の書類がない場合です。「なぜこの倍率にしたのか」を説明できる取締役会の議事録や退職慰労金規程がなければ、税務署は合理性を認めてくれません。退職金を支払ってから慌てて書類を用意しても、後付けと見なされるだけです。


2位 法人保険——2019年の通達改正が「大きな分岐点」

「保険で節税できる」という話は、社長なら何度も耳にしたことがあると思います。ただ、2019年の通達改正を境に、旧ルールと新ルールが混在している状況が続いています。

改正のポイントを一言で言うと、最高解約返戻率が85%を超える保険は、損金に算入できる金額が制限されたということです。前払期間(概ね10年間)に損金に落とせるのは、「100% マイナス 最高解約返戻率 × 0.9」分だけになりました。

具体例を挙げると、返戻率90%の契約なら、損金算入できるのは保険料のわずか19%。残りは資産計上です。旧ルールで経理処理し続けている会社が、調査で指摘を受けるケースが増えています。担当者が変わったタイミングで処理が止まり、誰も気づかないまま何年も経過していた、というパターンも珍しくありません。

今すぐ契約書と経理処理を照合してみることをおすすめします。


1位 役員報酬と交際費——「実態不備」は最も追徴額が膨らむ

件数としては、実はこれが一番多いのが現実です。

まず家族役員への報酬について。配偶者や子供を役員にして報酬を分散させる節税は定番手法ですが、「実際にどんな業務をしているか」を説明できなければ全額否認されます。税務調査では「週何日来ているか」「どんな業務を担当しているか」を具体的に問われます。出勤記録や業務報告の仕組みがない会社は、まず疑われると思ってください。

次に交際費の記録です。損金算入するには、以下の5項目を帳簿に残す義務があります。

  • 年月日
  • 参加者の氏名・会社・関係
  • 参加者数
  • 費用額・店名・所在地
  • 目的・参考事項

一つでも欠ければ、その接待費は全額否認の対象になります。法人カードで払って領収書だけ保管、あるいはレシートのみ——これは税務上アウトです。

そして、役員報酬・交際費の否認が最も怖い理由がもう一つあります。重加算税です。意図的な隠蔽や仮装と判断されると、通常の過少申告加算税(10〜15%)ではなく、本税に対して**35%**が課されます。追徴額が一気に膨らむ仕組みです。


3つの危険条件、あなたの会社はいくつ当てはまりましたか?

「1個も当てはまらない」という会社は少数派だと思います。退職金規程の未整備、保険の経理処理の確認不足、交際費の記録漏れ——どれも「うちは大丈夫だろう」と思いながら放置されやすいポイントです。

税務調査はいつ来るかわかりません。来てから慌てて書類を集めても、後付けはほぼ通用しません。今期中に一度、顧問税理士と書類の整備状況を確認してみることを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。