先日、顧問先の社長から突然の電話がありました。「先生、税務調査が入りまして……追徴が500万円を超えそうなんです」と。話を聞いてみると、特別な脱税をしていたわけでも、グレーな節税をしていたわけでもありません。多くの社長が「まあ大丈夫だろう」と流してしまうポイントで、ことごとく引っかかっていたのです。

税務調査員には、必ず最初に確認するリストがあります。申告書の隅々まで読み込んでいる彼らが「優先的に目を向ける場所」は、実はほぼ決まっています。今日は、その急所を3つお伝えします。

3位 交際費の「5点セット」、揃っていますか?

接待費や取引先との飲食代を交際費として計上している会社は多いと思います。ただ、1人あたり1万円を超える飲食費を交際費として認めてもらうには、5つの情報が帳簿に残っていなければなりません。

飲食した年月日、参加者の氏名と関係性、参加人数、金額・店名・所在地、そして用件の5点です。これが一つでも欠けると、調査員は「全額否認」を主張してきます。「レシートはあるのに」とおっしゃる社長が多いのですが、レシートだけでは足りないのです。

記憶が鮮明なうちにメモを残す習慣をつけてください。飲食翌日には細部を忘れます。その場でスマホのメモアプリに5項目を入力するだけで、調査時の交渉力がまるで変わります。

2位 役員社宅の「家賃70%ルール」は誤解です

「役員が住む物件を会社名義で借りれば、家賃の70%が経費になる」という話が流通しています。残念ながら、これは正確ではありません。

正しくは、会社が役員から徴収すべき「賃貸料相当額」は、固定資産税評価額をもとにした計算式で算出します。市場家賃の70%という話ではなく、評価額ベースの計算結果が基準です。この金額を下回る家賃しか役員が負担していない場合、その差額は「役員報酬」とみなされて課税されます。

都内の高額物件ほど計算のズレが大きくなります。「ずっとこの計算でやってきた」という会社ほど、過去に遡って修正を求められるリスクがあります。社宅を活用している会社は、一度専門家に計算を確認してもらうことをおすすめします。

1位 役員報酬の「定期同額」、年度途中に変えていませんか?

調査員の指摘件数でダントツ1位なのが、役員報酬に関するルール違反です。

税務上、役員報酬が損金として認められるには「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。事業年度が始まってから3ヶ月以内に金額を決定し、その後は毎月同額を支払い続けること——これが基本ルールです。途中で金額を変えると、変更後の超過分が全額「損金不算入」になります。

「業績が上がったから役員報酬を少し増やした」「資金繰りが厳しいから一時的に下げた」という動きを、決算期以外にやってしまっている会社が実は少なくありません。そして調査でそれが発覚すると、変更月以降の超過分が経費として認められない結果になります。影響が複数年にわたることもあり、税負担は想像以上に膨らみます。

役員報酬の変更は、必ず事前に税理士へ相談してから行ってください。

今期の決算前に、この3点を確認してください

急所を整理しましょう。

  • 交際費の領収書に5項目のメモが添付されているか
  • 役員社宅の賃貸料相当額が正しい計算で算出されているか
  • 今期、定期同額給与のルール外で役員報酬を変えていないか

一つでも「あれ、どうだっけ……」と思うものがあれば、今期の決算が終わる前に確認しておくのが得策です。税務調査は予告なく入ってきます。準備している会社とそうでない会社では、調査後の結果が大きく違います。まだ顧問税理士と今期の数字を総点検していないなら、ぜひこの3点を議題に上げてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。