先日、年商8億の建設会社を経営する社長から、こんな連絡が来ました。
「税務調査が入って、いきなり『この外注費、全額否認します』と言われた。どういうことか説明してくれ」
結論から言うと、そこには契約書がなく、成果物も残っていませんでした。税務署からすれば「実態がない支出」と判断されても仕方がない状況だったのです。
今回は、税務調査で狙われやすい経費否認のパターンを3つ、具体的な数字とともにお伝えします。心当たりがある方は、ぜひ今期中に手を打ってください。
3位:交際費に個人の出費が混じっている
「接待費」として計上している中に、個人旅行や家族を連れての食事が紛れ込んでいるケースです。
「社員との懇親会」と処理していた沖縄旅行に、社長の奥さんと子どもが同行していた——こういった事実が税務調査で出てくると、その費用全体が否認の対象になります。否認額が交際費全体の50%を超えることも珍しくありません。
さらに怖いのが「重加算税」です。意図的な隠蔽と判断されると35%が上乗せされ、追徴税額は数百万円規模に膨らみます。領収書をまとめて処理する時期こそ、私的支出が混入しやすいので注意が必要です。
2位:実態のないコンサル費・外注費
親族が役員を務める会社や、オーナー社長が実質的に支配する関連会社への支払いは、税務署が特に目を光らせています。
契約書はあるか。実際にどんな業務を行ったか。成果物や報告書は残っているか。これらが揃っていないと、年間の外注費が全額否認されるリスクがあります。
実際に、年間1億円規模の外注費を否認されて追徴税額が4,000万円を超えた事例があります。「グループ内でお金を回しているだけ」と税務署に判断された瞬間、その全額が経費から消えるのです。
形式だけ整えるのではなく、「なぜその会社に発注したのか」「どんな成果が得られたのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。
1位:役員報酬の定期同額違反
これが最も多く、最も金額が大きくなりやすいパターンです。
役員報酬には「定期同額給与」というルールがあって、原則として事業年度の途中で金額を変えてはいけません。業績が良かったから7月に月50万円増額した——その瞬間から、増額分の50万円×残り月数が全額損金不算入になります。
年商10億円を超える会社では、こうした役員報酬の調整が複数年にわたって積み重なり、否認額が2億円を超えるケースも出てきます。「決算前に利益調整のつもりで動かした」という意図が透けると、重加算税の対象にもなり得ます。
役員報酬を変更できるのは、原則として事業年度開始から3ヵ月以内です。このタイミングを逃すと、年度末まで手が出せません。
今すぐ確認してほしいこと
3つのパターンに共通しているのは、「後から説明できない支出になっている」という点です。
- 交際費の領収書に参加者名と目的が書かれているか
- 外注先との契約書・業務報告書が揃っているか
- 役員報酬の変更が定時株主総会の議事録に記録されているか
税務調査は「疑わしいところを掘る」作業です。証拠が揃っていれば、調査官も否認しようがありません。逆に書類が不完全だと、事実と関係なく否認の口実になってしまいます。
気になる点があれば、決算が近づく前に顧問税理士に一度棚卸しを依頼してみてください。今期の数字がまだ動かせるうちに動くのが、一番コストの低い節税対策です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。