先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、こんな連絡がありました。「来月、税務調査が入るって通知が来たんだけど、何か準備することある?」

一緒に過去3年分の帳簿を確認してみると、交際費の領収書に参加者の名前が書かれていないものが大量に出てきました。合計金額にして420万円超。最悪の場合、全額否認されるリスクがあります。「え、これ全部ダメなの?」と青ざめていた社長の顔が忘れられません。

税務調査は「ある日突然やってくる」ものです。そして調査官には、最初に必ず確認するポイントがあります。今回は、その3項目をお伝えします。

3位:交際費の「5項目記録」は揃っていますか?

2024年4月の税制改正で、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費から除外できるようになりました。「使わない手はない」と積極的に活用している会社も多いと思います。ただし、この特例を使うには厳格な記録が求められます。

必要な記録は、①日付、②参加者の氏名と会社との関係、③参加人数、④金額と店名、⑤飲食の目的(備考)の5項目です。1つでも欠けると特例は使えなくなり、全額を交際費として再計上しなければならなくなります。

領収書の裏に走り書きで済ませている会社は要注意です。クラウド会計や経費精算ツールで「この5項目を入力しないと申請できない」設定にしておくのが、現実的な対策です。調査が入ってから「あの飲み会の参加者って誰でしたっけ?」と遡っても、後の祭りです。

2位:役員社宅の「家賃」、正しく計算していますか?

節税策として人気の高い役員社宅ですが、賃料の設定を間違えている会社が非常に多いです。法人が役員に社宅を貸す場合、国税庁が定めた通達の計算式で算出した「賃料相当額」を、役員から徴収する必要があります。

この金額を下回る家賃しか受け取っていないと、差額が役員への給与として認定され、所得税と社会保険料が追加でかかってきます。「市場相場より安い家賃を払っているから節税になっている」という感覚でいると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

国税庁の計算式は固定資産税評価額や床面積をもとに算出するもので、相場家賃とは大きく乖離するケースも珍しくありません。実際に試算してみると「こんなに安くて良かったのか」という場合もあれば、「もっと払わないといけなかった」という場合もあります。役員社宅を使っているなら、今すぐ担当税理士に計算式で確認してもらうことをおすすめします。

1位:役員報酬の変更は「3ヶ月以内」が絶対条件

これが一番やらかしが多い項目です。そして、追徴税額も桁違いになりやすい。

法人が役員報酬を損金に算入するためには、「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。毎月同じ金額を支払い続けることが条件で、この金額を変更できるのは「事業年度開始後3ヶ月以内」だけです。4月決算の会社であれば、5月〜7月の株主総会などで決議して変更する必要があります。

8月に「今期は業績が良いから役員報酬を増やそう」と変更してしまうと、増額分は全額損金不算入になります。たとえば年間600万円の増額をした場合、法人税率30%として追徴税額は約180万円。延滞税や過少申告加算税が上乗せされると、200万円を超えることもあります。

「業績が上がったら報酬も上げたい」という気持ちはよくわかります。ただ、タイミングを間違えると、節税どころか大きなペナルティになってしまいます。役員報酬を変更したい場合は、必ず事前に税理士に相談してください。

調査が来ても困らない状態にしておくことが大事

税務調査は「問題のある会社だけが選ばれる」わけではありません。ランダムに選定されることもあります。大切なのは、「いつ調査が来ても困らない状態」を日頃から維持しておくことです。

今期まだ余裕があるなら、この3項目を自社でチェックしてみてください。交際費の5項目記録が揃っているか、役員社宅の賃料が通達通りか、役員報酬の変更ルールを守っているか。特に役員報酬は、一度期中に変えてしまうと取り返しがつきません。次の事業年度が始まったらすぐに動く、これだけで大きなリスクを避けられます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。