3月も後半に差し掛かった頃、不動産業を営む社長からLINEが届きました。「今期、思ったより利益が出てしまって……今から何か手はありますか?」年商8億円の会社のオーナーです。

最初に確認したのは決算日でした。「3月31日ですよね?」——残り1週間しかない。それでも、手は残っていました。ただし、動くなら今日から動かなければならない話です。

3月31日は「節税の切符が切れる日」

3月決算の法人にとって、3月31日は単なる期末ではありません。その日を境に、複数の大型節税手段が文字通り「消える」日です。

4月1日に「あの手を使えばよかった」と気づいても、遡って適用することは一切できません。税の世界に「後からやっぱり」は通じません。期末を過ぎたら後戻りなしです。

残り1週間でまだ動ける3つの手段

オペレーティングリースへの出資

航空機や船舶を対象にした匿名組合型の金融商品で、法人の利益圧縮に使われることが多い手段です。たとえば1億円を出資した場合、初年度の損金算入率は30〜40%程度。3000万〜4000万円が今期の損金として計上できます。実効税率34%で計算すると、1000万円超の納税圧縮になる計算です。

ただし一点、必ず押さえておくべきことがあります。これは節税ではなく「課税の繰り延べ」です。将来の期に益金として戻ってきます。それを前提にしたキャッシュフロー計画が不可欠です。

決算賞与の損金算入

決算賞与は、3月中に全従業員へ個別に支給額を通知し、1ヶ月以内(4月30日まで)に支払いを完了させれば、今期の損金として算入できます。

たとえば従業員50人に各30万円を支給するとして、合計1500万円が損金に。実効税率34%なら約510万円の圧縮効果です。ただし「全員への個別通知」が要件であり、一括の社内掲示では認められません。書面や議事録をきちんと整備することが前提になります。

一括払い保険料の活用

短期払いの経営者保険など、一定の条件を満たす契約の保険料を今期中に一括払いすることで損金処理できるケースがあります。ただし2019年の保険税制改正以降、対象商品は大幅に絞られています。「以前使えた商品と同じだろう」という判断は危険で、個別の商品確認が必須です。

急いでいるときこそ、順番を守る

残り1週間と聞くと焦りますが、要件を確認せずに動くのが最も危険です。条件を満たさない決算賞与は損金否認されますし、オペレーティングリースも匿名組合契約の締結が期末前に完了していなければ適用されません。

「急いで動く」と「正しく動く」を両立するために、まず今日やるべきことは顧問税理士への連絡です。今期の利益着地の見込みを共有し、どの手段が期限内に実行できるかを確認する。この順番が大切です。

また、納税額を圧縮するあまり、会社の手元資金を大きく削るのも本末転倒です。出資や保険料の支払いには当然キャッシュが必要です。納税とキャッシュのバランスを見ながら判断してください。

動けるかどうかで、今期が変わる

節税は「知っているかどうか」より、「期限内に動けるかどうか」で決まります。3月決算の社長にとって、この1週間は一年に一度しかないタイミングです。

まだ今期の着地を税理士に相談していないなら、今日中に連絡することをおすすめします。「今から使える手はありますか?」のひとことが、数百万円の差を生むことがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。