先日、年商8億の建設会社を経営するA社長からこんな連絡がきました。「先生、うちって節税できてる方ですよね?」と。
決算書を見せてもらったら、使えるはずの経費が5つも抜けていました。試算してみると、年間で約450万円ほど余計に税金を払っている計算になります。
A社長は「そんなに?!」と絶句していましたが、これは珍しいことではありません。売上が伸びるほど、節税の「穴」も大きくなる。今日は、社長が見逃しがちな経費化の手法を、効果の大きい順にお伝えします。
第5位:旅費規程の「出張日当」で社長の手取りを増やす
意外と知られていませんが、出張日当は給与ではなく「実費補償」として、非課税で支払うことができます。
旅費規程を社内規定として整備しておけば、社長が出張したときに支払った日当を損金(経費)に計上できます。社長側も所得税がかからないので、手取りの増加と節税が同時に実現します。
目安として、日当1日1万円・月15日出張なら年間180万円が非課税かつ損金扱いになります。旅費規程自体は1〜2ページで作れますが、「社会通念上合理的な金額」の範囲に収めることが大前提です。過大な日当は税務調査で指摘されます。
第4位:役員社宅で「家賃」を会社の経費にする
社長が自宅を会社名義で借り上げ、そこに住む「役員社宅」の仕組みです。
ポイントは家賃の計算方法にあります。固定資産税の課税標準額を使った国税庁の通達に基づく計算式で「最低限の家賃」を算出し、その金額だけを社長個人が会社に支払います。そうすると、家賃の大部分を会社の損金に計上できます。
たとえば月20万円の賃貸に住んでいる場合、計算次第では社長の個人負担が月2〜3万円になり、残りの17〜18万円が会社の経費になるケースもあります。ただし設計が甘い会社が多く、計算式の適用ミスで税務調査で指摘されることもあるため、必ず税理士と一緒に設計してください。
第3位:中小企業倒産防止共済を最大限活用する
正式名称は「中小企業倒産防止共済(セーフティネット共済)」ですが、節税目的でも広く活用されている制度です。
掛金は月最大20万円、年間240万円まで積み立てられ、全額が損金算入されます。最大800万円まで積み立て可能で、積立期間中は毎年の利益を着実に圧縮できます。
さらに面白いのが解約時の活用法です。社長に退職金を支払うタイミングで解約すると、解約返戻金(益金)と退職金(損金)を相殺させることができます。手元の現金を使わずに退職金財源を積み立てながら、毎年の節税もできる——一粒で二度おいしい制度です。加入から40か月以上経過すると解約返戻率が100%になるため、長く持つほど有利です。
第2位:解約返戻率50%以下の法人保険で全額損金
「保険で節税」と聞くと、2019年の通達改正を思い出す方もいるかもしれません。たしかに高返戻率の保険による節税は規制されましたが、解約返戻率が50%以下の商品については保険料の全額損金算入が認められています。
代表的なのは定期保険の一部商品です。万が一のときの保障機能を確保しながら、毎年の保険料を全額経費にできます。返戻率が低い分、純粋な「運用」目的ではなく、利益が突発的に膨らんだ年の調整や、役員退職金の財源積み立てに活用されるケースが多いです。
保険商品ごとに損金算入ルールが異なるため、加入前に必ず設計書の内容を税理士に確認してもらうことが重要です。
第1位:役員退職金は「最強の節税」
これは異論がないでしょう。社長が引退するときに受け取る退職金は、退職所得控除と1/2課税の恩恵を二重に受けられるという、税制上きわめて有利な仕組みです。
勤続年数5年超・功績倍率2〜3倍(最終月額報酬×勤続年数×功績倍率が目安)の範囲で設定すれば、数千万円単位の退職金を法人の損金に計上しながら、個人は大幅に低い税率で受け取れます。同額を給与で受け取る場合と比べると、手取りの差は何千万円にもなることがあります。
だからこそ「いつ、いくら、どうやって払うか」を早めに設計しておくことが重要です。突発的な退職金は税務調査で「過大退職金」と認定されるリスクがあるため、顧問税理士と10年単位で計画を立てておくのが定石です。
5つすべてを今すぐ使えるわけではありませんが、まだ旅費規程を作っていないなら今期中に整備しておくのが最初の一手です。倒産防止共済も、加入が早いほど積立上限の800万円に近づけます。「儲かってから考える」では遅い——利益が出ている今だからこそ、設計しておく価値があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。