先日、年商8億円のサービス業の社長から、こんな連絡が届きました。

「突然、税務署から電話が来た。来月、調査に入るらしい」

業績は決して悪くないはずなのに、なぜうちが——。その社長は困惑していました。でも話を聞くうちに、いくつかの「調査フラグ」がしっかり重なっていたことがわかってきました。

税務署は「狙う会社」をあらかじめ決めている

税務調査はランダムに会社を選ぶわけではありません。国税局・税務署は膨大なデータをもとに、「調査コストに見合うリターンが見込める先」を優先的にピックアップしています。

毎年、特定のシグナルを持つ法人が選定対象になっています。以下の7つ、心当たりがないか確認してみてください。

① 同業他社と比べて利益率が著しく低い

「うちは儲かっていないから調査は来ないだろう」——よく聞く話ですが、これは大きな誤解です。

むしろ税務署からすると、「なぜ同業他社が10〜15%の利益率を出しているのに、この会社は2〜3%なのか」という疑問が調査の動機になります。業種ごとの平均利益率は税務署も完全に把握していて、業界平均から大きく外れている場合は優先的に目を向けられます。

② 役員報酬・交際費が突然増えた

前期に比べて今期、役員報酬が大幅に増えた、あるいは交際費が突然膨らんだ——こうした変化も強い調査フラグです。

「利益が出そうだから、急いで役員報酬を上げた」というケースは税務署も熟知しています。役員報酬は定時株主総会後の変更が原則で、期中に恣意的に増やすことはできません。それを無視した場合、増額分が損金不算入になるリスクがあります。

③ 現金取引・外注費が急増した

現金売上が多い業種(飲食、小売、建設など)や、外注費が突然膨らんだ年は特に注意が必要です。

外注費は「実体のない架空外注」として損金計上されるケースが多く、調査でも重点的にチェックされます。外注先への振込記録、業務委託契約書、業務内容のエビデンスが整っていないと、調査が入ったときにまったく説明できない状況になります。

④ 3期以上連続の赤字が続いている

赤字が続いているのに会社が潰れない——税務署の目には「どこかに利益を隠しているのでは?」と映ります。

創業期や業態転換の時期なら理解されますが、説明のつかない継続赤字は経営実態への疑念を呼びます。特に、赤字法人なのに社長の生活水準が高い場合、個人と法人の資金が混在していると見なされることもあります。

⑤ 役員への多額の貸付金・借入金がある

役員貸付金(法人が社長にお金を貸している状態)が数千万円規模で積み上がっている会社は、非常に多く調査対象になっています。

これは「利益を社長が抜いている」と認定されるリスクがあり、法人から役員への金銭貸付には適正な利率での利子計上も義務づけられています。残高がじわじわ増えているなら、今期中に整理することを真剣に検討してください。

⑥ 海外取引・グループ間取引が多い

海外子会社や関連会社との取引が多い場合、移転価格税制の観点から調査は一段と厳しくなります。

グループ間の取引価格を恣意的に設定すれば、利益を意図的に低税率国へ移せてしまいます。海外展開している会社は、取引価格の根拠となる移転価格文書の整備が不可欠です。これが整っていないだけで、調査官の印象は一気に悪くなります。

⑦ 消費税の還付申告が頻繁にある

設備投資や輸出などで消費税の還付を受けること自体は正当な権利です。しかし「頻繁な還付申告」は、ほぼ自動的に調査のトリガーになります。

実態のない仕入れや架空の設備投資による不正還付を税務署が強く警戒しているためです。還付額が大きい年は、申告前に税理士と証拠資料を整えておくのが鉄則です。

フラグが重なるほど、リスクは跳ね上がる

1つだけ当てはまるのと、3〜4個重なるのとでは、選定リスクがまったく異なります。

そして不正と認定されると話は深刻です。本税に加えて重加算税35%(無申告なら40%)が上乗せされ、意図的な不正行為があったと判断されると、通常の調査期間(3〜5年)を超えて7年遡及される可能性があります。追徴税額が数千万円規模になることも、決して珍しくありません。

調査が入ってからでは手遅れになる

税務署が調査に来ると決めた時点で、すでに情報収集は終わっています。調査が入ってから慌てて書類を整えても、後の祭りです。

心当たりのある項目があったなら、今期の決算が確定する前に顧問税理士に相談することを強くおすすめします。「うちは大丈夫だろう」という楽観論が、結果的に一番コストの高い選択になりかねません。準備だけは、早いほど有利です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。