先日、年商3億円ほどの卸売業の社長から、こんな連絡が届きました。「決算申告が終わってから、使えていた節税があったと気づいた。どうすればよかったか」と。
話を聞いてみると、顧問税理士はいる。毎期きちんと申告もしている。それでも、要件を満たしていた優遇制度が申告書にまったく反映されていなかったのです。
悪意があったわけではありません。ただ、多忙な申告シーズンには「知っているはずなのに見落とされやすい制度」が確かにいくつか存在します。3月決算の法人は、申告前に必ずこの3つを確認してください。
賃上げしているのに、税額控除を申告していない
最初に確認してほしいのが、「賃上げ促進税制」の申告漏れです。
前年と比べて給与総額が1.5%以上増加していれば、増加額の最大45%を法人税額から直接差し引けます。「税額控除」なので、計算した税額そのものから引けるのが強みです。利益が出ている法人にとっては、非常に効果が大きい制度です。
それでも、要件を満たしているのに申告書に反映されていない法人が驚くほど多い。「うちはそんなに賃上げしていない」と思っているかもしれませんが、判定には雇用者全体への給与支払総額を使うため、ベースアップがわずかでも対象になるケースがあります。
まずは顧問税理士に「賃上げ促進税制は申告書に入っていますか?」と一言確認してみてください。
交際費、まだ5,000円ルールで処理していませんか
次は、交際費の飲食費です。
2024年4月から、接待飲食費を損金算入できる上限が1人あたり5,000円から1万円に引き上げられました。ところが、いまだに旧基準のまま処理している事務所が少なくありません。
1人1万円以下の飲食であれば、次の5項目を領収書や帳簿に記載するだけで全額損金になります。飲食の年月日、接待相手の名前と関係性、自社の参加者名、飲食店の名称と所在地、そして金額です。
以前は「5,000円を超えているから諦めた」という食事が、今なら全額損金にできるケースが増えています。過去の処理を見直すだけで、思わぬ節税になることもあります。
倒産防止共済、月20万円まで全額損金になる
3つ目は「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」の活用です。
掛金は月最大20万円、年間240万円まで全額損金に算入できます。法人税の実効税率を約34%で計算すると、満額積み立てた場合の節税効果は年間で約81万円です。数字で見ると、その破壊力がわかっていただけるかと思います。
さらに、解約時には積み立てた掛金相当額が戻ってきます。つまり、税負担を先送りしながら手元資金を外部に積み立てておける仕組みです。いわば「節税しながら積み立てる」感覚に近い。
ただし、加入から40か月未満での解約は元本割れになるため、短期解約は禁物です。また、申し込み月の翌月から掛金がスタートするため、3月決算なら今すぐ動くことが重要です。
申告書は「出して終わり」ではない
税務申告を顧問税理士に任せること自体は、もちろん正しい選択です。ただ、節税の制度は毎年改正があり、すべての変更が現場に即座に反映されるとは限りません。
今回挙げた3つは、どれも「制度は知られているのに見落とされやすい」という共通点があります。申告期限が迫っているなら、今日中に顧問税理士へ確認の連絡を入れてみてください。そのひと言が、数十万円から百万円近い差になることがあります。
「知らなかった」では済まないのが税務の世界ですが、「聞いた」なら取り返せる可能性があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。