先月、3月決算を終えたばかりの製造業の社長から連絡をいただきました。「消費税の還付申告をしたんですが、顧問税理士に確認したら、もっと戻ってくるはずだったかもしれないと言われて…」と、やや悔しそうな声で。

話を聞いてみると、3月決算の会社が見落としやすい、消費税還付の典型的な3つの盲点にはまっていたんです。知っているか知らないかで、数百万円〜1,000万円規模の差が出ることもある話です。

第3位:個別対応方式をそのまま使っていない

課税売上割合が95%を下回る会社——つまり、住宅の賃貸や一部の金融取引など非課税売上が一定割合を超えている会社は、消費税の仕入控除額の計算方法を選べます。

ほとんどの会社が何も考えずに使っている「一括比例配分方式」は、仕入消費税に課税売上割合を掛けた分しか控除できません。でも「個別対応方式」を選ぶと、課税業務に直接対応する仕入れについては全額控除が可能になります。

たとえば1億円の設備投資をした年に、課税売上割合が60%だとします。一括比例方式なら600万円しか控除できないところ、個別対応方式なら最大1,000万円近くまで控除できるケースもあります。この差は実に400万円です。

ただし、個別対応方式は一度選ぶと翌期以降も継続が原則になるため、大型設備投資の前に税理士と方針を確認しておくのが鉄則です。

第2位:課税期間の短縮届出を出していない

消費税の還付は、何も手続きをしていなければ年1回の確定申告時にしか受け取れません。でも「課税期間の短縮」の届出を事前に提出しておくと、毎月または四半期ごとに還付申請ができるようになります。

これが特に効くのが、期初に大型投資をした会社です。たとえば4月(期首)に1億円の設備投資をした場合、通常なら翌年5月の確定申告後まで還付を待つことになります。でも課税期間を1ヶ月に短縮していれば、最短で同年6月には還付を受け取れます。

約11ヶ月の資金繰り改善効果があり、金利相当分の節約にもなります。消費税の1,000万円が11ヶ月早く手元に戻ってくるなら、それだけで数十万円の金利コストを避けられる計算です。

最大の注意点は、「この届出は事後申請が一切できない」という点です。投資を実行する前に提出が済んでいないと、まったく効果がありません。「来期から設備投資を増やす予定がある」という社長は、今すぐ税理士に確認してください。

第1位:課税売上割合に準ずる割合の承認申請

これが最も影響が大きく、かつ最も見落とされやすい盲点です。

消費税の仕入控除は原則として全社一律の「課税売上割合」で計算しますが、不動産賃貸を手がけている会社や海外子会社への出向者がいる会社では、この割合が実態より低く出てしまうことがあります。土地の売却が1件あっただけで割合が大幅に下がる、なんてことも起きます。

そこで使えるのが「課税売上割合に準ずる割合の承認申請」です。部門ごとや事業ごとに個別の割合を計算し、それを税務署長に申請・承認してもらうことで、実態に即した高い控除率を適用できるようになります。

会社の規模や事業構成によっては、年間数百万〜1,000万円規模の還付額の差につながることもあります。申請には事前準備と税務署との折衝が必要ですが、一度承認されれば継続的に効果が続くため、費用対効果は非常に高い手続きです。


これら3つに共通するのは、「知っていれば事前に手が打てるが、決算後に気づいても取り返しがつかない」という点です。特に課税期間の短縮と準ずる割合の申請は、タイミングがすべてです。

3月決算の会社であれば、今の5〜6月が次期の対策を仕込む最良のタイミングです。今期の決算書を手元に置いて、ぜひ一度税理士に「うちはこの3つを活用できますか?」と聞いてみてください。何もしなければ、来年の決算後にまた同じ後悔をすることになりかねません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。